オリンピックの開催は、その国に大きな経済負担を強いることになるというのは、すでに周知の事実かと思いますが、一方で、オリンピック開催前までは「期待感」から相場が動きやすい(開催国の通貨が買われやすい)とも言及されることがあります。
そこで、今回は過去に行われた夏季オリンピックの開催前後で、どのようにその開催国の通貨(主に対米ドルで)が変動したのかということをチェックし、それをもとにFXでトレードする方法について、見ていきたいと思います。
調査機関については、過去の為替レートの変動が確認できる1971年以降の夏季オリンピックを今回の調査対象としました。
過去の夏季オリンピックの開催都市と開催年は、下記の通りとなっています。
夏季オリンピック | 都市 | 国 |
---|---|---|
1972 | ミュンヘン | ドイツ |
1976 | モントリオール | カナダ |
1980 | モスクワ | ソビエト |
1984 | ロサンゼルス | アメリカ |
1988 | ソウル | 韓国 |
1992 | バルセロナ | スペイン |
1996 | アトランタ | アメリカ |
2000 | シドニー | オーストラリア |
2004 | アテネ | ギリシャ |
2008 | 北京 | 中国 |
2012 | ロンドン | イギリス |
2016 | リオデジャネイロ | ブラジル |
2020 | 東京 | 日本 |
そして、それぞれの国の通貨は下記の通りとなっています。
夏季オリンピック | 国 | 通貨 |
---|---|---|
1972 | ドイツ | マルク |
1976 | カナダ | カナダドル |
1980 | ソビエト | ルーブル |
1984 | アメリカ | 米ドル |
1988 | 韓国 | ウォン |
1992 | スペイン | リラ |
1996 | アメリカ | 米ドル |
2000 | オーストラリア | 豪ドル |
2004 | ギリシャ | ユーロ |
2008 | 中国 | 人民元 |
2012 | イギリス | ポンド |
2016 | ブラジル | レアル |
2020 | 日本 | 円 |
それでは、早速見ていきたいと思います。
1972年ミュンヘンオリンピックでのドイツ・マルクの動向
1972年当時はまだ、ユーロがありませんでしたので、ドイツの通貨は「マルク」となっています。
取引ボリュームが最も大きかったと予測される対米ドルでの動向を見てみましょう。
データ出所/Germany / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
ご覧頂きました通り、開催前の1971年から開催後の1973年までほぼ一貫して、マルクは売られています。
ただ、値幅にすると、とても小さな値上がり幅ですが、夏季オリンピックの開始直前の1972年の6月からオリンピック終了後の1973年の1月までは、マルク高が続いていることを確認することができます。
1976年モントリオール・オリンピックでのカナダドルの動向
では、続いて1976年に行われたカナダのモントリオール・オリンピックのときのカナダドル(対米ドル)のレートを見てみましょう。
下記は、1971年から2016年までの米ドル/カナダドル(USD/CAD)のチャートになります。
データ出所/Canada / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
ご覧頂きました通り、オリンピック開催前年の1975年1月からカナダドル買いが進み、オリンピック終了後の年末にあたる1976年12月末までカナダドルは上昇していることが分かります。
1984年ロサンゼルス・オリンピックでの米ドルの動向
続いては、1984年に行われたアメリカ・ロサンゼルスオリンピックでの米ドルの動向について、マルクと円で見てみたいと思います。
下記は、1971年から2001年までの米ドル/マルクのチャートになりまして、ロサンゼルス・オリンピックの前年にあたる1983年1月から、オリンピック終了翌年の1985年2月まで、順調に米ドルが買われているのが確認できます。
データ出所/Germany / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
では続いて、ドル円の動きを見てみましょう。
ドル円の方は、マルクのようなシンプルな動きではなく、1983年1月から1984年3月まではドル安円高が進み、1984年4月から1985年2月までは、ドル高円安が進むといった値動きになっていました。
データ出所/Japan / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
値動きとしては、上下動はあるものの、224円から259円の中を推移しています。(その後のプラザ合意後の、ドル円の動きに比べると、穏やかに見えてしまいますが・・・)
1988年ソウル・オリンピックでの韓国ウォンの動向
続いては1998年に韓国で行われたソウル・オリンピック前後のウォンの動向になります。
1987年1月から1989年1月まで、ドル安ウォン高がほぼ一貫して進行していることが確認できます。
データ出所/South Korea / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
1996年アトランタ・オリンピックでの米ドルの動向
続いては、1996年に行われたアメリカ・アトランタ・オリンピックでの米ドルの動向について、マルクと円で見てみたいと思います。
下記は、1971年から2001年までの米ドル/マルク/のチャートになりまして、アトランタ・オリンピックの前年にあたる1995年4月から、オリンピック終了翌年の1997年8月まで、順調に米ドルが買われているのが確認できます。
データ出所/Germany / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
では続いて、ドル円の動きを見てみましょう。
ドル円の方は、ほぼ同じような動きを見せておりまして、オリンピック前年の1995年4月からオリンピック終了翌年の1997年4月までドル高円安が進むといった値動きになっていました。
データ出所/Japan / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
2000年シドニー・オリンピックでの豪ドルの動向
続いては、2000年に行われたオーストラリア・シドニーでのオリンピック前後の豪ドル/米ドルの動向について見ていきたいと思います。
下記は、1971年から2016年までの豪ドル/米ドルのチャートになりまして、シドニー・オリンピックの前年にあたる1999年4月から、オリンピック終了翌年の2001年1月まで、ほぼ一本調子で豪ドルが売られているのが確認できます。
データ出所/U.S. / Australia Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
2004年アテネ・オリンピックでのユーロの動向
続いては、通貨ユーロが誕生してから初の夏季オリンピックとなった2004年ギリシャ・アテネ・オリンピック前後のユーロ/米ドルの動向について見ていきたいと思います。
下記は、1999年から2016年までのユーロ/米ドルのチャートになりまして、アテネ・オリンピックの前年にあたる2003年1月から、オリンピックが行われた2004年12月まで、上下動しながら右肩上がりでユーロ高が進んだことが確認できます。
データ出所/U.S. / Euro Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
2012年ロンドン・オリンピックでのポンドの動向
続いては、2012年にイギリスで開催されたロンドン・オリンピック前後のポンド/米ドルの動向について見ていきたいと思います。
下記は、2006年から2016年までのポンド/米ドルのチャートになりまして、ロンドン・オリンピックの前年にあたる2011年5月から、オリンピックが行われた2011年8月まで、上下動しながら右肩上がりでポンド高が進んだことが確認できます。
データ出所/U.S. / U.K. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
2016年リオ・オリンピックでのブラジルレアルの動向
そして、本稿執筆時点の2016年に行われるブラジル・リオ・オリンピック前後の米ドル/ブラジルレアルの動向について見ていきたいと思います。
下記は、2011年から2016年までの米ドル/レアルのチャートになりまして、リオ・オリンピックが開催される2016年1月から、レアル高米ドル安が進行していることが確認できます。
データ出所/Brazil / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
まとめと2020年東京オリンピックに向けてのドル円の展望
「夏季オリンピック開催国の為替レートの動向を予測してFXでトレードする方法」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
ここまでの各通貨の動向をまとめた表が下記になります。
夏季オリンピック | 国 | オリンピック前後の値動き |
---|---|---|
1972 | ドイツ/マルク | マルク安 |
1976 | カナダ/カナダドル | カナダドル高 |
1984 | アメリカ/米ドル | 米ドル高(対マルク) 高安まちまち(対日本円) |
1988 | 韓国/ウォン | ウォン高 |
1996 | アメリカ/米ドル | 米ドル高 |
2000 | オーストラリア/豪ドル | 豪ドル安 |
2004 | ギリシャ/ユーロ | ユーロ高 |
2012 | イギリス/ポンド | ポンド高 |
2016 | ブラジル/レアル | レアル高 |
2020 | 日本/円 | ? |
1972年のマルク安、2000年の豪ドル安というケースがありますが、残りのオリンピックに関しては、おおむね、開催国の通貨が「買われている」という傾向にあることが確認できました。
FXでオリンピックを契機にトレードを仕掛けるとしますと、長いときで開催前年の1月から開催翌年の年央あたりまで、短いときでも開催年の1月から年央の8月ぐらいまでが一つの目安になってくるかと思います。(もちろん、ストップはお忘れなく)
今回の記事が、FXでトレードをしている人の参考にして頂ければ幸いです。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました!