元日銀総裁の白川さんが、為替レートとの相関が比較的高いと言及したこともある日米の2年債の金利差。(参考/内外金利差と為替相場、白川総裁が日米2年物金利差の相関高いと言及-ロイター-)
今回はそんな日米2年債の金利差と為替動向の推移について、見ていきたいと思います。
日米2年債の金利差と為替レートの長期推移
まずは為替レート、アメリカと日本の2年債の過去の推移から確認していきましょう。
下記は、ドル円の1971年から2016年までのチャートになります。
出典/Japan / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
そして、続いてご覧いただくのが、1976年から2016年までのアメリカの2年債の金利の推移になります。
出典/2-Year Treasury Constant Maturity Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
そして、下記が1976年から2016年までの日本の2年債の金利の推移になります。
出典/国債金利情報 -財務省-
※財務省が公表している金利情報をもとに、当サイトにてグラフ化。
ここまでご覧いただくとお分かりの通り、ドル円は1976年以降、ほぼ一貫して円高トレンドを続けていまして、また、米国、日本の2年債についても上下動はありますが、長期的には金利は下落トレンドが続いています。
では、上記のデータをもとに、為替レートと日米2年債の金利差がどうのように推移してきたのかということをもう少し細かく見ていきたいと思います。
最初にご覧いただくのは、日本とアメリカの2年債利回りの差のピークとボトムを抽出したデフォルメチャートになります。
FRBと財務省の時系列データをもとに、その金利差を当サイトで整理したところ、ボトムとピークは下記のような形で訪れていたことが分かりました。
アメリカの2年債利回り | 日本の2年債利回り | |
---|---|---|
1976年11月 | 5.81 | 8.5535 |
1981年9月 | 16.46 | 8.492 |
1986年10月 | 6.28 | 4.878 |
1998年1月 | 9.18 | 3.964 |
1990年9月 | 8.08 | 8.255 |
200年5月 | 6.81 | 0.39 |
2003年3月 | 1.57 | 0.05 |
2006年7月 | 5.12 | 0.81 |
2011年9月 | 0.21 | 0.13 |
そして、それをデフォルメチャートにしたものが下記になります。
チャートが上に行くほど、日米の金利差がアメリカの金利が高い形で広がることを意味していまして、逆にチャートが下に行くほど、日米の金利差が日本の金利が高い形で広がることを意味しています。
為替レートが金利の高い方の通貨が強くなるという見方を前提としますと、アメリカの金利が相対的に高くなるということ(チャートが上向き)は、ドル高圧力が働き、日本の金利が高くなると(チャートが下向き)、円高圧力がかかるということになります。
なお、金利差がマイナスになっている1976年の頃は、日本の金利の方がアメリカよりも高かったということを意味しています。
では、続いて、その2年債の金利差がトップとボトムをつけたときの為替レートと、その後の為替レートの動きを見ていきましょう。
まずは、2年債の金利差の天底をドル円の為替レートのチャートにプロットしたものをご覧ください。
出典/Japan / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
そして、上記のデータを具体的に数値として表にまとめたものが下記になります。
当時の為替レート | その後の為替レートのピーク・ボトム | |
---|---|---|
1976年11月(金利差ボトム) | 295.16 | 250.27円(1980年4月) |
1981年9月(金利差トップ) | 229.48 | 225.20円(1984年4月) |
1986年10月(金利差ボトム) | 156.47 | 123.20円(1988年11月) |
1989年1月(金利差トップ) | 127.36 | 158.45円(1990年4月) |
1990年9月(金利差ボトム) | 138.44 | 83.68円(1995年4月) |
2000年5月(金利差トップ) | 108.32 | 103.81円(2004年12月) |
2003年3月(金利差ボトム) | 118.68 | 122.68円(2007年6月) |
2006年7月(金利差トップ) | 114.62 | 76.64円(2011年10月) |
2011年9月(金利差ボトム) | 76.79 | 123.71円(2015年6月) |
2016年3月(金利差トップ) | 112.93 | ? |
チャート及び表で、ご覧いただきました通り、日米2年債の金利差のボトムや天井が、過去、何度かドル円のその後のボトムや天井の起点となっていることが分かります。
つまり、日米2年債の金利差がボトムやピークを打った後、その動きを後追いするかのように為替レートが動いているということです。
例えば、1981年の9月にアメリカの金利が日本の金利よりも高くなり、金利差が天井をつけると、そこから約2年半後の1984年4月にドル円は円安のピークを迎えています。
また、直近では2011年の9月にボトムアウトした日米2年債の金利差から約3年半後の2015年6月にドル円は円安のピークを迎えています。
一方で、1990年9月の日米2年債の金利差がボトムを打った後、1995年の4月に83.68円に迫る円高の動きを見せるなどの矛盾も見られます。
ただ、一部の例外を除きますと、かなりの高確率で日米2年債の金利差がドル円の為替レートに先行する形でボトムや天井をつけていることが確認できます。
2000年以降は2年債の金利差と為替レートの相関はかなり高い
ここまでは、日米2年債の金利差と為替レートの長期的な関係をご覧いただきましたが、特筆すべきは、日本の2年債の金利がほぼゼロ金利に張り付くようになった2000年以降は、日米2年債の金利差のトップ・ボトムと、その後のドル円相場の動向についてかなり高い相関が見られるようになっている点です。
恐らく、日本がゼロ金利に張り付く中、ドル円相場はアメリカ2年債の金利水準で左右されるという展開に終始するようになり、相関が高くなっているものと考えられます。
例えば、ドル円相場は2016年に入ってから円高が起こっていますが、日本がマイナス金利を導入したこともあり、日本側の金利は下がっているものの、アメリカの2年債の金利も追随する形で下がってきておりまして、ドル円相場は日米2年債の金利差というよりも、アメリカの2年債利回りの方により強く影響を受けているようにも見えます。
出典/Japan / U.S. Foreign Exchange Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
出典/2-Year Treasury Constant Maturity Rate -Federal Reserve Bank of St. Louis-
つまり、短期的にはドル円相場の動向については、アメリカの2年債の利回りを注意深く見ておくことがかなり重要なポイントになってくるものと考えられます。
そして、中長期的には、日米2年債の金利差のピーク・ボトムがその後のドル円相場の流れを生んでいるものと考えられます。
2016年3月の日米2年債の金利差のピークアウトと今後のドル円相場
本記事を執筆している2016年8月の段階で、日米2年債の金利差のピークは2016年3月となっています。
もし、これまで通りの展開で推移するのであれば、ドル円相場は3年~4年は円高相場となる可能性があります。
ただ、ここから先、日米2年債の金利差のピークが再び更新されるようであれば、ドル高圧力がかかり、その場合は、ドル円相場は円安へ傾くということになるかと思います。