株式市場では「セル・イン・メイ」の格言があるように大きな値動きに見舞われることも少なくない「5月相場」
今回は、そんな5月相場の実態を探るべく、1997年から2016年までの「5月」の豪ドル・米ドル相場が、どんな値動きをしてきたのかを実際のデータをもとに検証してみました。
早速、見ていきましょう。
1997年~2016年における5月の豪ドル・米ドル相場
まず、最初にご覧いただくのは、1997年から2016年までの5月の豪ドル・米ドル相場が豪ドル高、豪ドル安のどちらに動くことが多かったかを単純にカウントしてみた表になります。
1997年から2016年の月足チャートは下記の通りです。
データ出所/GMOクリック証券
そして、上記のチャートから毎年5月の始値と終値を抽出して、その結果が豪ドル高だったのか、豪ドル安だったのかを時系列でまとめたものが下記の表になります。
5月の豪ドル米ドル相場 | レート(始値⇒終値) | 結果 |
---|---|---|
1997 | 0.78080⇒0.76000 | 豪ドル安 |
1998 | 0.64920⇒0.62270 | 豪ドル安 |
1999 | 0.66040⇒0.64860 | 豪ドル安 |
2000 | 0.58470⇒0.57220 | 豪ドル安 |
2001 | 0.51250⇒0.50560 | 豪ドル安 |
2002 | 0.53820⇒0.56750 | 豪ドル高 |
2003 | 0.62630⇒0.65310 | 豪ドル高 |
2004 | 0.72040⇒0.71490 | 豪ドル安 |
2005 | 0.78090⇒0.75560 | 豪ドル安 |
2006 | 0.75850⇒0.75190 | 豪ドル安 |
2007 | 0.83000⇒0.82780 | 豪ドル安 |
2008 | 0.94320⇒0.95560 | 豪ドル高 |
2009 | 0.72530⇒0.80060 | 豪ドル高 |
2010 | 0.92306⇒0.84570 | 豪ドル安 |
2011 | 1.09728⇒1.06700 | 豪ドル安 |
2012 | 1.04271⇒0.97315 | 豪ドル安 |
2013 | 1.03696⇒0.95718 | 豪ドル安 |
2014 | 0.92859⇒0.93113 | 豪ドル高 |
2015 | 0.79034⇒0.76441 | 豪ドル安 |
2016 | 0.76072⇒0.72302 | 豪ドル安 |
こうして並べてみますと、幾つか興味深い傾向があることが分かります。
まず、目を引くのが1997年から2016年までの5月相場における豪ドルの圧倒的な弱さです。
1997年から2016年までの20年間のうち、実に15年が陰線、つまり豪ドル安で終わっていまして、確率にして「75%」という高い確率で、一方的に豪ドルが売られ続けています。
「株は5月に売れ」と言われますが、同じ売りを入れるなら、豪ドルを売った方が良かった20年間だったということが分かります。
では、この20年間の5月が、ファンダメンタルズ的に豪ドルの売り材料が豊富だったかと言いますと、決してそんなことはありません。
例えば、2003年~2007年や2009年~2016年は世界的に株高や資源高が続き、リスクオン相場で買われやすい豪ドルにとっては、むしろ追い風という状況が多くあったほどです。(関連が深い鉄鋼価格については、中国経済の失速とともに、2010年以降下落傾向にあります。)
もちろん、サブプライムローンによるアメリカでの金融危機、リーマンショック、欧州の財政危機に端を発する金融危機、関係の深い中国経済の失速、オーストラリアの金融緩和拡大、アメリカのテーパリングからのドル買いなどの豪ドル売り材料もありましたし、それらの材料には素直に反応しています。
いずれにしても、豪ドルにとっての悪材料・好材料にも関わらず、豪ドルが一方的に売られ続けてきたというのは、アノマリーとして注目に値すると言えるでしょう。
そして、ここ20年の5月の豪ドル・米ドル相場の豪ドル高、豪ドル安の回数をまとめた表は下記の通りです。
5月の豪ドル米ドル相場 | 豪ドル安に終わった回数 | 豪ドル高に終わった回数 |
---|---|---|
1997-2016 | 15回 | 5回 |
1997年から2016年の20年間については、回数としては、豪ドル安が圧倒的に優勢といった結果に終わっています。
では、続いて、その中身について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
1997年~2016年における5月の豪ドル・米ドル相場の変動幅と変動率
それでは、今度は豪ドル・米ドルの5月相場がどのくらいの変動が起こっているのか、つまり、ボラティリティがどれくらいなのかということを検証していきたいと思います。
その検証を行うために、上記のチャートから、各年の高値と安値を抽出してまとめた表が下記になります。
5月の豪ドル米ドル相場 | 高値 | 安値 |
---|---|---|
1997年 | 0.78900 | 0.75900 |
1998年 | 0.65480 | 0.61600 |
1999年 | 0.67450 | 0.64600 |
2000年 | 0.59740 | 0.56450 |
2001年 | 0.53190 | 0.50290 |
2002年 | 0.56960 | 0.53390 |
2003年 | 0.66230 | 0.62550 |
2004年 | 0.73390 | 0.67960 |
2005年 | 0.78230 | 0.75300 |
2006年 | 0.77910 | 0.74640 |
2007年 | 0.83510 | 0.81630 |
2008年 | 0.96540 | 0.92720 |
2009年 | 0.80150 | 0.72400 |
2010年 | 0.92736 | 0.80655 |
2011年 | 1.10104 | 1.04392 |
2012年 | 1.04295 | 0.96728 |
2013年 | 1.03813 | 0.95277 |
2014年 | 0.94083 | 0.92026 |
2015年 | 0.81629 | 0.76174 |
2016年 | 0.77191 | 0.71446 |
ご覧いただくとお分かりの通り、1ヶ月の間に、かなり大きな値動きをしている月が複数存在しまして、例えば、欧州発の金融危機がマーケットに混乱をもたらしはじめた2010年の5月には高値0.92736から安値0.80655まで、1ヶ月の間に「13.1%」という”豪ドル安”が起こっています。
また、リーマンショック後に先行して利上げを行ってきたオーストラリアの経済が失速するのに伴って、利下げに追い込まれ始めた2012年の5月には、高値1.04295から安値0.96728まで、1ヶ月の間に「7.3%」の”豪ドル安”が起こっています。
そして、それらを含めて、豪ドル・米ドルの各年の5月相場の変動幅と変動率をまとめた表が下記になります。
5月の豪ドル米ドル相場 | 変動幅 | 変動率 |
---|---|---|
1997年 | 0.03 | 3.9% |
1998年 | 0.0388 | 6% |
1999年 | 0.0285 | 4.3% |
2000年 | 0.0329 | 5.6% |
2001年 | 0.029 | 5.5% |
2002年 | 0.0357 | 6.3% |
2003年 | 0.0368 | 5.6% |
2004年 | 0.0543 | 7.4% |
2005年 | 0.0293 | 3.8% |
2006年 | 0.0327 | 4.2% |
2007年 | 0.0188 | 2.3% |
2008年 | 0.0382 | 4% |
2009年 | 0.0775 | 9.7% |
2010年 | 0.12081 | 13.1% |
2011年 | 0.05712 | 5.2% |
2012年 | 0.07567 | 7.3% |
2013年 | 0.08536 | 8.3% |
2014年 | 0.02057 | 2.2% |
2015年 | 0.05455 | 6.7% |
2016年 | 0.05745 | 7.5% |
平均 | 0.0477 | 5.9% |
平均変動幅と平均変動率はそれぞれ「0.0477」と「5.9%」となっておりまして、1997年から2016年の豪ドルドル相場の1月の平均変動幅「0.0417」、平均変動率「5.5%」と比べても、互角以上の大きな値動きが見られます。
参考/豪ドル米ドルの1月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/豪ドル米ドルの2月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/豪ドル米ドルの3月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/豪ドル米ドルの4月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
1997年~2016年の5月相場の値動きから考える豪ドル・米ドルのトレード戦略
ここまで過去約20年の5月の豪ドル・米ドル相場の動向をご覧いただきましたが、いかがでしたでしょうか。
これまでの傾向に過ぎないという前提はありますが、豪ドル米ドルの5月相場は、2000年以降、かなりの高確率で豪ドル安が起こっています。
特に2003~2007年や2009年以降の株高局面(リスクテイクの流れ)で、豪ドル安が起こっているのは特筆すべき点と言えますし、このアノマリーを利用するのであれば、5月相場のファーストセレクションは、とりあえず「豪ドル・ショート」ということになるかと思います。
また、値動きで見ても、5月は大きく豪ドルが売られることが少なくなく、豪ドルを月初にショートして、月末にクローズするというトレードは、リスクリターンでも、かなり優位性があると言えます。(もちろん、今後もこの流れが続けば・・・という条件付きです。)
アノマリーを過信することなく、そして、過小評価することもなく、ストップロス、ポジションサイズに気をつけながら、トレードのチャンスをモノにしたいところですね。
本記事が、FXでトレードをしている人や、これからトレードをしようと考えている人の参考になれば、幸いです。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました!