欧米勢、日本勢共に夏休みに入ることから流動性が落ち、波乱の相場となることも少なくない「8月相場」
今回は、そんな8月相場の実態を探るべく、1997年から2016年までの「8月」の豪ドル・米ドル相場が、どんな値動きをしてきたのかを実際のデータをもとに検証してみました。
早速、見ていきましょう。
1997年~2016年における8月の豪ドル・米ドル相場
まず、最初にご覧いただくのは、1997年から2016年までの8月の豪ドル・米ドル相場が豪ドル高、豪ドル安のどちらに動くことが多かったかを単純にカウントしてみた表になります。
1997年から2016年の月足チャートは下記の通りです。
データ出所/GMOクリック証券
そして、上記のチャートから毎年8月の始値と終値を抽出して、その結果が豪ドル高だったのか、豪ドル安だったのかを時系列でまとめたものが下記の表になります。
8月の豪ドル米ドル相場 | レート(始値⇒終値) | 結果 |
---|---|---|
1997 | 0.74680⇒0.73200 | 豪ドル安 |
1998 | 0.60550⇒0.56800 | 豪ドル安 |
1999 | 0.65000⇒0.63920 | 豪ドル安 |
2000 | 0.58080⇒0.57670 | 豪ドル安 |
2001 | 0.50910⇒0.53000 | 豪ドル高 |
2002 | 0.54250⇒0.55060 | 豪ドル高 |
2003 | 0.64850⇒0.64680 | 豪ドル安 |
2004 | 0.70220⇒0.70390 | 豪ドル高 |
2005 | 0.75630⇒0.75510 | 豪ドル安 |
2006 | 0.76620⇒0.76350 | 豪ドル安 |
2007 | 0.85150⇒0.81850 | 豪ドル安 |
2008 | 0.94190⇒0.85740 | 豪ドル安 |
2009 | 0.83540⇒0.84370 | 豪ドル高 |
2010 | 0.90610⇒0.89046 | 豪ドル安 |
2011 | 1.09920⇒1.07048 | 豪ドル安 |
2012 | 1.05013⇒1.03218 | 豪ドル安 |
2013 | 0.89799⇒0.89028 | 豪ドル安 |
2014 | 0.92934⇒0.93386 | 豪ドル高 |
2015 | 0.73078⇒0.71115 | 豪ドル安 |
2016 | 0.75960⇒0.75150 | 豪ドル安 |
こうして並べてみますと、幾つか興味深い傾向があることが分かります。
まず、目を引くのが1997年から2016年までの20年間における豪ドルの圧倒的な弱さです。
豪ドル米ドルの相場が豪ドル安で終わった回数は20年中15年もあり、確率で言えば75%という高さです。
では、この20年間の8月が、ファンダメンタルズ的に豪ドルの売り材料が集中していたのか?と言いますと、決してそんなことはありません。
例えば、2003年~2007年や2009年~2016年は世界的に株高や資源高が続き、リスクオン相場で買われやすい豪ドルにとっては、むしろ追い風という状況が多くあったほどです。(関連が深い鉄鋼価格については、中国経済の失速とともに、下落傾向にあります。)
もちろん、サブプライムローンによるアメリカでの金融危機、リーマンショック、欧州の財政危機に端を発する金融危機、関係の深い中国経済の失速、オーストラリアの金融緩和拡大、アメリカのテーパリングからのドル買いなどの豪ドル売り材料もありましたが、ただ、それらを考慮しても8月にここまで豪ドルが一方的に売られ続けてきたというのは、ファンダメンタルズ的には整合性が取れません。
その背景に何があったのかということを正確に把握することは極めて難しいですが、ただ8月に豪ドルが売られやすいという”アノマリー”は、事実として注目に値すると言えるでしょう。
そして、ここ20年の8月の豪ドル・米ドル相場の豪ドル高、豪ドル安の回数をまとめた表は下記の通りです。
8月の豪ドル米ドル相場 | 豪ドル安に終わった回数 | 豪ドル高に終わった回数 |
---|---|---|
1997-2016 | 15回 | 5回 |
1997年から2016年の20年間については、回数としては、豪ドル安が圧倒的に優勢といった結果に終わっています。
では、続いて、その中身について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
1997年~2016年における8月の豪ドル・米ドル相場の変動幅と変動率
それでは、今度は豪ドル・米ドルの8月相場がどのくらいの変動が起こっているのか、つまり、ボラティリティがどれくらいなのかということを検証していきたいと思います。
その検証を行うために、上記のチャートから、各年の高値と安値を抽出してまとめた表が下記になります。
8月の豪ドル米ドル相場 | 高値 | 安値 |
---|---|---|
1997年 | 0.75070 | 0.72900 |
1998年 | 0.61100 | 0.54850 |
1999年 | 0.65990 | 0.62820 |
2000年 | 0.59450 | 0.56650 |
2001年 | 0.53880 | 0.50760 |
2002年 | 0.55450 | 0.52290 |
2003年 | 0.66200 | 0.63650 |
2004年 | 0.72590 | 0.69570 |
2005年 | 0.77520 | 0.74540 |
2006年 | 0.77090 | 0.75500 |
2007年 | 0.86620 | 0.76720 |
2008年 | 0.94200 | 0.84950 |
2009年 | 0.84770 | 0.81550 |
2010年 | 0.92204 | 0.87701 |
2011年 | 1.10639 | 0.99265 |
2012年 | 1.06126 | 1.02759 |
2013年 | 0.92325 | 0.88475 |
2014年 | 0.93735 | 0.92349 |
2015年 | 0.74392 | 0.70433 |
2016年 | 0.77553 | 0.74808 |
ご覧いただくとお分かりの通り、1ヶ月の間に、かなり大きな値動きをしている月が複数存在しまして、例えば、ヨーロッパの金融危機がマーケットを混乱に陥れていた渦中の2011年の8月には高値1.10639から安値0.99265まで、1ヶ月の間に「10.3%」という”豪ドル暴落”が起こっています。
また、リーマンショック直前となる2008年の8月には、高値0.94200から安値0.84950まで、1ヶ月の間に「9.9%」の”豪ドル安”が起こっています。
そして、それらを含めて、豪ドル・米ドルの各年の8月相場の変動幅と変動率をまとめた表が下記になります。
8月の豪ドル米ドル相場 | 変動幅 | 変動率 |
---|---|---|
1997年 | 0.0217 | 2.9% |
1998年 | 0.0625 | 10.3% |
1999年 | 0.0317 | 4.9% |
2000年 | 0.028 | 4.8% |
2001年 | 0.0312 | 5.8% |
2002年 | 0.0316 | 5.7% |
2003年 | 0.0255 | 3.9% |
2004年 | 0.0302 | 2.1% |
2005年 | 0.0298 | 3.9% |
2006年 | 0.0925 | 2.1% |
2007年 | 0.0322 | 11.5% |
2008年 | 0.0450 | 9.9% |
2009年 | 0.0322 | 3.8% |
2010年 | 0.045 | 4.9% |
2011年 | 0.1137 | 10.3% |
2012年 | 0.0336 | 3.2% |
2013年 | 0.0385 | 4.2% |
2014年 | 0.0138 | 1.5% |
2015年 | 0.0395 | 5.4% |
2016年 | 0.0274 | 3.6% |
平均 | 0.042 | 5.3% |
平均変動幅と平均変動率はそれぞれ「0.042」と「5.3%」となっておりまして、1997年から2016年の豪ドルドル相場の1月の平均変動幅「0.0417」、平均変動率「5.5%」と比べると値動きは、ほぼ互角という状況です。
参考/豪ドル米ドルの1月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/豪ドル米ドルの2月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/豪ドル米ドルの3月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/豪ドル米ドルの4月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/豪ドル米ドルの5月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/豪ドル米ドルの6月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/豪ドル米ドルの7月相場は豪ドル高?豪ドル安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
1997年~2016年の8月相場の値動きから考える豪ドル・米ドルのトレード戦略
ここまで過去約20年の8月の豪ドル・米ドル相場の動向をご覧いただきましたが、いかがでしたでしょうか。
これまでの傾向に過ぎないという前提はありますが、直近20年の豪ドル米ドルの8月相場は、豪ドルにとっての好材料・悪材料に関わらず、かなりの高確率で豪ドル安で終わっています。
仮に、今後もそうした動きが続くと想定しますと、8月に豪ドル米ドルをトレードするときのファーストセレクションは、まずは、豪ドル売りということになるかと思います。
また、リスクリターンで見ても豪ドルが売り込まれるときは、大きな値幅になることが少なくないため、長期で見れば、8月は売りでエントリーすることで報われることが多そうです。
とは言え、相場に絶対は有りませんので、アノマリーを過信することなく、ストップロス、ポジションサイズに気をつけながら、トレードのチャンスをモノにしたいところですね。
本記事が、FXでトレードをしている人や、これからトレードをしようと考えている人の参考になれば、幸いです。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました!