記事投稿日/2015.12.26
追記/2016.11.10
2015年の12月、ついにアメリカのFRBが、利上げに踏み切りました。
米ドル円の先行きを占うという意味では、過去、サイクル分析では非常に大きな起点となることが多かった米国の利上げ。
そこで、今回は2015年の12月を起点として、2016年から2018年までの米ドル/円の為替相場について、サイクル分析で予想をしてみたいと思います。
では、早速見ていきたいと思います。
※続編となる記事を下記に書きました。
→米ドル/円の為替相場は円高トレンドに?2019年から2020年までサイクル分析で予想!
米国の利上げとドル円相場
早速ですが、まずは、アメリカのFFレートと米ドル円の超長期チャートをご覧ください。
米ドル/円のチャートは1971年から2015年までのチャートになります。
出典/セントルイス連銀-Japan / U.S. Foreign Exchange Rate-
FFレートは1954年から2015年11月までの長期チャートになります。
出典/セントルイス連銀-Effective Federal Funds Rate-
過去、FFレートの変動と米ドル/円の関係では、FFレートの利上げ開始から約3年程度は、米ドル/円は基本的に「円安」が進み、その後は「円高」が進むというサイクルが見られています。
ただし、過去の金利引き上げ局面では、利上げをしたときから、直ちに円安になるわけではなく、一旦、円高に振れた後に(約6ヶ月-最長1年程度-)、その後、米ドル円のピークに向かって円安が進むという流れになっています。
この流れでいきますと、2015年の12月にアメリカが利上げを行いましたので、2016年の年央から年末あたりまで一旦、「円高」に振れた後、2017年の年末あるいは2018年の春にかけて「円安」に向かうことが予想されます。
サイクル分析に従えば、2016年中に大きな円高局面があれば、そこは絶好の米ドル/円の買い場となる可能性があります。
米国景気とサイクル分析
続いては、米ドル円の先行きを占う最重要ポイントの一つである米国景気について見ていきたいと思います。
過去、アメリカは景気が悪化するとその後、金融緩和の方向に政策を切り替え、それに伴って米ドル円も遅れて円高トレンドに切り替わるというサイクルがあります。
FRBのイエレン議長は、利上げを行った2015年の12月のFOMCでデータ次第で金融政策を見直すことを明言していますので、景気が停滞したり、後退すると直ちに利上げを休止、あるいは利下げに入ることが予想されます。(参考ロイター-イエレン米FRB議長の会見要旨-)
そんな金融政策の影響を大きく受けるのが米国の国債金利で、そして、当サイトがサイクル分析の一つとして着目しているのは、景気との関係が深い10年国債と2年国債の金利差である「イールドカーブ」です。
イールドカーブは景気の状態を移す鏡としては極めて有用で、景気が良好なときは短期金利が低く、長期金利が高いという状態になり(スティープ化)、反対に短期金利と長期金利の金利差が逆転する「逆イールドカーブ」が発生すると、その後に景気後退あるいは金融緩和が起こり、遅れて米ドル円が円高トレンドに入るという流れになります。
過去のイールドカーブと景気後退のサイクルは下のような状況で(1971-2015年)、逆イールドカーブが発生すると必ず、景気後退が起こるわけではなく、金融緩和だけで済むという場合があることがお分かり頂けるかと思います。
出典/セントルイス連銀-2-Year Treasury Constant Maturity Rate+10-Year Treasury Constant Maturity Rate-
そして、2015年12月現在の米国10年国債と2年国債の金利差は、いわゆる”スティープ化”という状況で、景気が後退するような気配は感じられません。
逆イールドカーブが発生するまでは、アメリカの景気後退を心配する必要はないでしょう。
なお、現在のイールドカーブの状態をチェックするには、StockCharts.comにある「Dynamic Yield Curve」がとても便利です。
まとめ-2016年の米ドル円は円高に-
アメリカの政策金利、そして、アメリカ経済の景気の状態から予想される2016年の米ドル/円の為替相場は、サイクル的には「円高」です。
時間軸でどこまで「円高」が続くのかということになりますと、短ければ2016年の年央あたり、長ければ2017年の春ごろまで続くということになりそうです。
円高の値幅については、米ドル円の年間変動の一つの目安である「10円」ということを考慮しますと、110円前後、下に突っ込む場面があるとしても、100円前後が一つのポイントになることが予想されます。
2016年には日本国内では参院選が予定されており、それにあわせて日銀の黒田総裁はバズーカ3となる金融緩和を仕掛けてくる可能性がありますが、そのとき円安に振れるようであれば、米ドル円をショートする絶好のチャンスとなる可能性があります。
そして、その後訪れるであろう2016年中の米ドル円のボトムアウトを経て、2017年から2018年にかけて円安トレンド再開という動きになりそうです。
追記:イギリスのEU離脱とトランプ大統領誕生を通過したドル円相場について
2016年11月10日現在、6月のブレクジット、11月のトランプ大統領誕生という”2大イベント”を通過したドル円相場は節目である100円を割り込むことができずに、105円から106円台で推移しています。
近年稀にみる二つのショッキングなイベントを持ってしても、ドル円は節目である100円を明確に割り込むことはできませんでした。(FX各社によって異なりますが、2016年のドル円の安値は6月24日に瞬間的につけた98~99円)
参考/1996年から2016年のドル円の年足チャート
データ出所/GMOクリック証券
ここまでの流れを見る限り、ドル円は当面の底を打ち、この先、ブレクジットやトランプ・ショックを超えるような事態が起こらない限り、100円割れを起こすようなことはなさそうです。
そして、2015年12月のFRBによる利上げを起点としたサイクル分析による2016年の円高トレンドが終了し、2018年に向けての円安トレンドが再開したと見て良さそうです。
少なくとも、短期的には、アメリカサイドから明確な「ドル高牽制」の姿勢が見えるまでは、円安の動きが続くでしょう。
また、トランプ氏が「強いドルは国益」などの「ドル高容認」スタンスを取るのであれば、円安トレンドは既定路線となりそうです。
ただ、トランプ氏がドル高に対して厳しい姿勢で臨み、FRBが金融政策の変更を余儀なくされたり、あるいは、議長の交代があり、FRBが極端なハト派に転向したりすると、ドル円相場の動向に大きな影響を与える可能性がありますので、その点は留意しておきたいところです。
※続編となる記事を下記に書きました。