記事投稿日/2018.5.29
2015年の12月にアメリカのFRBが利上げに踏み切ってから約2年半が経過し、インフレ懸念の台頭とともに米国10年債金利が上昇、さらにイールドカーブがややフラットになりつつある、そんな2018年の5月末ですが、読者のみなさまは為替相場とどのように対峙していらっしゃるでしょうか。
早速、本テーマの結論から先に申し上げますと、筆者は早ければ2018年の8月にも米ドル円は急落し、秋口から年末にかけてやや値を戻すものの、2019年以降には本格的に円高トレンドに突入すると予想しています。
今回は、その予想の背景についてサイクル分析などを中心に説明していきたいと思います。
では、早速見ていきましょう。
2015年12月の米国の利上げから3年を迎えるドル円相場の先行き
まずはおさらいも兼ねて、アメリカのFFレートと米ドル円の超長期チャートをご覧ください。
米ドル/円のチャートは1971年から2018年までのチャートになります。
直近は2015年の12月の利上げ後の円高、そしてトランプラリーからの円安、2017年のボックス相場、そして2018年に入ってからのやや乱高下という状況になっていますが、数年単位では名目レートはほとんど変化がありません。
出典/セントルイス連銀-Japan / U.S. Foreign Exchange Rate-
そして、FFレートは1954年から2018年4月までの長期チャートになります。
緩やかではありますが、FRBによる金利の引き上げが続いています。
出典/セントルイス連銀-Effective Federal Funds Rate-
過去、FFレートの変動と米ドル/円の関係では、FFレートの利上げ開始から約3年程度は、米ドル/円は基本的に「円安」が進み、その後は「円高」が進むというサイクルが見られています。
アメリカが直近で利上げをスタートさせたのは2015年12月ですので、通常のサイクル通りであれば、2018年の年末あたりから円高トレンドに移行してもおかしくない時期に入っていきます。
過去のアメリカFRBの利上げとその後のドル円の状況を表にまとめたものは以下の表の通りです。
米国10年国債金利のボトム | 利上げの開始 | ドル円のピーク(円安) |
---|---|---|
1971年3月 | 1973年1月 | 1975年12月(305.67円) |
1976年12月 | 1977年8月 | 1980年4月(250.27円) |
1980年6月 | 1980年9月 | 1982年10月(271.61円) |
1983年5月 | 1984年4月 | 1985年2月(260.47円) |
1987年1月 | 1987年9月 | 1990年4月(158.45円) |
1993年10月 | 1994年2月 1997年3月 | 1998年8月(144.68円) |
1998年10月 | 1999年6月 | 2002年2月(133.64円) |
2003年6月 | 2004年6月 | 2007年6月(122.68円) |
2012年7月 | 2015年12月 | 参考/2015年6月(123.71円) 仮/2016年1月(121.686円) |
今回は今のところ、2015年の年6月につけた123.71円や2016年1月の121.686円を超えるような動きは出ていませんので、もしかすると、2018年の12月にかけて戻り高値を試した後に円高トレンドに転換という動きになるシナリオもあるかもしれません。(筆者はこのシナリオはあまり想定していませんが・・・)
参考/ヤフーファイナンス
米国10年債と2年債の金利差縮小とイールドカーブのフラット化の動き
続いては、米ドル円の先行きを占う最重要ポイントの一つである米国の金利の状況について見ていきたいと思います。
過去アメリカは景気が悪化するとその後、金融緩和の方向に政策を切り替え、利下げを行い、それに伴って米ドル円も円高トレンドに切り替わるというサイクルがあります。
そんな金融政策の影響を大きく受けるのが米国の国債金利で、そして、当サイトがサイクル分析の一つとして着目しているのは、景気との関係が深い10年国債と2年国債の金利差である「イールドカーブ」です。
イールドカーブは景気の状態を移す鏡としては極めて有用で、景気が良好なときは短期金利が低く、長期金利が高いという状態になり(スティープ化)、反対に短期金利と長期金利の金利差が逆転する「逆イールドカーブ」が発生すると、その後に景気後退あるいは金融緩和が起こり、遅れて米ドル円が円高トレンドに入るという流れになります。
過去のイールドカーブと景気後退のサイクルは下のような状況で(1971-2015年)、逆イールドカーブが発生すると必ず、景気後退が起こるわけではありませんが(金融緩和だけで済む場合もある)、かなりの確率で景気が後退しているのが分かります。
下記は2013年から2018年のイールドカーブになりまして、2018年に入り、徐々にその差が小さくなってきていることがお分かりいただけるかと思います。
出典/セントルイス連銀-2-Year Treasury Constant Maturity Rate+10-Year Treasury Constant Maturity Rate-
別の角度からも比べてみましょう。
下は2015年12月時点のダイナミック・イールドカーブです。
そして、下が2018年5月のダイナミック・イールドカーブになりまして、かなり短期金利が上昇することで、逆イールドカーブの形に近づきつつあります。
これは過去のサイクル分析では、間もなく、景気後退あるいは景気のピークが迫りつつあることを示唆しています。
チャート出所/StockCharts.com「Dynamic Yield Curve」
2018年8月の米ドル円相場で急激な円高が起きる?
1997年から2017年までの約20年のドル円相場では、8月は円高になる回数が2倍になっていまして、さらに8月に急落した場合、炭鉱のカナリア的に翌年などからさらに円高になるケースが少なくありません。
8月のドル円相場 | 円安に終わった回数 | 円高に終わった回数 |
---|---|---|
1997-2017 | 7回 | 14回 |
もし、2018年の8月にドル円が急落して大きな円高が発生する場合は、2019年以降の円高トレンド転換に拍車がかかる可能性がありますので、十分に留意しておきたいところです。
参考/ドル円の8月相場は円高?円安?1997年から2017年までの変動幅・変動率のまとめ
なお、8月相場は円安が起こってもそれほど大きな円安になる月ではありませんので、ドル円のショートを狙うのでれば、8月は絶好のチャンスになるかもしれません。(もちろん、トレードは自己責任で、ストップロスはお忘れなく)
まとめ-2019~2020年の米ドル円は円高に-
アメリカの10年債と2年債の金利差、そして、アメリカの利上げから約3年という年月を考慮しますと、米ドル/円の為替相場は、早ければ2018年の年末あるいは2019年の年始あたりから「円高」トレンドに入りそうです。
時間軸でどこまで「円高」が続くのかということになりますと、筆者は少なくとも2020年のオリンピック前後までは円高が続くと予想しています。
夏季オリンピック開催国の多くは、「通貨高」がセオリーになっているという”アノマリー”もありますので・・。
夏季オリンピック | 国 | オリンピック前後の値動き |
---|---|---|
1972 | ドイツ/マルク | マルク安 |
1976 | カナダ/カナダドル | カナダドル高 |
1984 | アメリカ/米ドル | 米ドル高(対マルク) 高安まちまち(対日本円) |
1988 | 韓国/ウォン | ウォン高 |
1996 | アメリカ/米ドル | 米ドル高 |
2000 | オーストラリア/豪ドル | 豪ドル安 |
2004 | ギリシャ/ユーロ | ユーロ高 |
2012 | イギリス/ポンド | ポンド高 |
2016 | ブラジル/レアル | レアル高 |
2020 | 日本/円 | ? |
参考/夏季オリンピック開催国の為替レートの動向を予測してFXでトレードする方法
2020年のオリンピック以降のドル円相場のシナリオについては、また折を見て記事にしたいと思います。