欧米勢にとっては多くの企業が本決算となり、ポジション調整やトレンドの急反転が見られることもある「12月相場」
今回は、そんな12月相場の実態を探るべく、1997年から2016年までの「12月」のユーロドル相場が、どんな値動きをしてきたのかを実際のデータをもとに検証してみました。
早速、見ていきましょう。
1997年~2016年における12月のユーロドル相場
まず、最初にご覧いただくのは、1997年から2016年までの12月のユーロドル相場がユーロ高、ユーロ安のどちらに動くことが多かったかを単純にカウントしてみた表になります。
1997年から2016年の月足チャートは下記の通りです。
データ出所/GMOクリック証券
そして、上記のチャートから毎年12月の始値と終値を抽出して、その結果がユーロ高だったのか、ユーロ安だったのかを時系列でまとめたものが下記の表になります。
12月のユーロドル相場 | レート(始値⇒終値) | 結果 |
---|---|---|
1997 | 1.12230⇒1.09860 | ユーロ安 |
1998 | 1.15950⇒1.17210 | ユーロ高 |
1999 | 1.00910⇒1.00700 | ユーロ安 |
2000 | 0.87220⇒0.94220 | ユーロ高 |
2001 | 0.89550⇒0.89110 | ユーロ安 |
2002 | 0.99420⇒1.04970 | ユーロ高 |
2003 | 1.19730⇒1.25780 | ユーロ高 |
2004 | 1.32750⇒1.35520 | ユーロ高 |
2005 | 1.17860⇒1.18430 | ユーロ高 |
2006 | 1.32380⇒1.31150 | ユーロ安 |
2007 | 1.46350⇒1.45980 | ユーロ安 |
2008 | 1.27080⇒1.39340 | ユーロ高 |
2009 | 1.50040⇒1.43241 | ユーロ安 |
2010 | 1.29815⇒1.33729 | ユーロ高 |
2011 | 1.34451⇒1.29601 | ユーロ安 |
2012 | 1.29826⇒1.31929 | ユーロ高 |
2013 | 1.35843⇒1.37443 | ユーロ高 |
2014 | 1.24632⇒1.20976 | ユーロ安 |
2015 | 1.05631⇒1.08533 | ユーロ高 |
2016 | 1.05864⇒1.05171 | ユーロ安 |
こうして並べてみますと、幾つか興味深い傾向があることが分かります。
まず、目を引くのが2010年から2016年にかけてのユーロ買い圧力の強さです。
2010年から2015年と言えば、ユーロの財政危機、度重なる金融緩和、ドイツ銀行の破たん懸念など、ユーロ売りの材料が目白押しだったにも関わらず、6年中、4年がユーロ高という結果は特筆すべき点と言えるのではないでしょうか。
また、2010年以降の12月に関しては、それまでユーロ売りのポジションを取ってきた投資家・投機家によるポジション手仕舞いのための反対売買が出やすい傾向にあったことも、見て取れます。
ただ、2000年から2009年にかけてのユーロドルの値動きを見てみますと、必ずしも2010年以降のようなポジション反転の動きがが起こっているわけではなく、むしろ、その年の雰囲気を象徴するかのようなトレンドフォローな動きも出ておりまして、12月は反対売買が出やすいというバイアスを持ちすぎるのは、良くないと言えます。
例えば、2000年から2005年にかけては、ITバブル崩壊、NY同時多発テロ以降のドル売りの流れや、2003年からの世界的な景気回復、資源高を背景に6年中、5年でユーロ高が見られています。
そして、過去、約20年の12月のユーロドル相場のユーロ高、ユーロ安の回数をまとめた表は下記の通りです。
12月のユーロドル相場 | ユーロ安に終わった回数 | ユーロ高に終わった回数 |
---|---|---|
1997-2016 | 9回 | 11回 |
ここ約20年で見ますと、回数的には、ややユーロ高が優勢という状況になっています。
では、続いて、その中身について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
1997年~2016年における12月のユーロドル相場の変動幅と変動率
それでは、今度はユーロドルの12月相場がどのくらいの変動が起こっているのか、つまり、ボラティリティがどれくらいなのかということを検証していきたいと思います。
その検証を行うために、上記のチャートから、各年の高値と安値を抽出してまとめた表が下記になります。
12月のユーロドル相場 | 高値 | 安値 |
---|---|---|
1997年 | 1.12320 | 1.09750 |
1998年 | 1.19530 | 1.15720 |
1999年 | 1.03000 | 0.99860 |
2000年 | 0.94250 | 0.86980 |
2001年 | 0.90820 | 0.87370 |
2002年 | 1.05030 | 0.98550 |
2003年 | 1.26460 | 1.19360 |
2004年 | 1.36620 | 1.31440 |
2005年 | 1.20580 | 1.16620 |
2006年 | 1.33640 | 1.30530 |
2007年 | 1.47690 | 1.43100 |
2008年 | 1.47170 | 1.25490 |
2009年 | 1.51406 | 1.42169 |
2010年 | 1.34975 | 1.29706 |
2011年 | 1.35478 | 1.28579 |
2012年 | 1.33079 | 1.28766 |
2013年 | 1.38931 | 1.35241 |
2014年 | 1.25696 | 1.20951 |
2015年 | 1.10594 | 1.05158 |
2016年 | 1.08746 | 1.03520 |
ご覧いただくとお分かりの通り、1ヶ月の間に、かなり大きな値動きをしている月が複数存在しまして、例えば、その年の9月にリーマンショックがあった2008年の12月には、安値1.25490から高値1.47170まで「14.8%」という、20年に1度あるかないかの”ユーロ高”が起こっています。
また、ITバブルが崩壊し、アメリカ・ナスダックの株式市場の暴落がはじまった2000年の12月には、安値0.86980から安値0.94250まで、1ヶ月の間に「7.8%」の”ユーロ高”が起こっています。
そして、それらを含めて、ユーロドルの各年の12月相場の変動幅と変動率をまとめた表が下記になります。
12月のユーロドル相場 | 変動幅 | 変動率 |
---|---|---|
1997年 | 0.0257 | 2.3% |
1998年 | 0.0381 | 3.2% |
1999年 | 0.0314 | 3.1% |
2000年 | 0.0727 | 7.8% |
2001年 | 0.0345 | 3.8% |
2002年 | 0.0648 | 6.2% |
2003年 | 0.071 | 5.7% |
2004年 | 0.0518 | 3.8% |
2005年 | 0.0396 | 3.3% |
2006年 | 0.311 | 2.4% |
2007年 | 0.0459 | 3.2% |
2008年 | 0.2168 | 14.8% |
2009年 | 0.0923 | 6.2% |
2010年 | 0.0526 | 4% |
2011年 | 0.0689 | 5.1% |
2012年 | 0.0431 | 3.3% |
2013年 | 0.0369 | 2.7% |
2014年 | 0.0474 | 3.8% |
2015年 | 0.0543 | 5% |
2016年 | 0.05226 | 4.9% |
平均 | 0.0585 | 4.7% |
平均変動幅と平均変動率はそれぞれ「0.0585」と「4.7%」となっておりまして、1997年から2016年のユーロドル相場の1月の平均変動幅「0.0629」、平均変動率「5.14%」と比べると、ややボラティリティは低い1ヶ月となっています。
参考/ユーロドルの1月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの2月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの3月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの4月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの5月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの6月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの7月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの8月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの9月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2016年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの10月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2015年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの11月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2015年までの変動幅・変動率のまとめ
参考/ユーロドルの12月相場はユーロ高?ユーロ安?1997年から2015年までの変動幅・変動率のまとめ
1997年~2016年の12月相場の値動きから考えるユーロドルのトレード戦略
ここまで過去約20年の12月のユーロドル相場の動向をご覧いただきましたが、いかがでしたでしょうか。
これまでの傾向に過ぎないという前提はありますが、ユーロドルの12月相場は、2010年代前後から、その年のトレンドが反転するような動きが多くなってきています。
その背景にあるのが、投機的な動きなのかどうかは定かではありませんが、もしも、この傾向が今後も続くと仮定するのであれば、その年にユーロにネガティブな材料が噴出していれば、12月はユーロ買い、ユーロにポジティブな材料が出ていれば、ユーロ売りという、トレード戦略を選択すれば良さそうです。
特に、12月には、FRBやECBの定例会合で流れが変わることが少なくありませんので、ポジション反転のタイミングとして、そうしたイベントをターゲットにするというのも一つの戦略かもしれません。
なお、全体的に値動きの小さい12月のユーロドル相場ですが、2000年や2008年のように、大きく値が動くケースもありますので、ストップロスやポジションサイズにはしっかりと注意を払っておきたいところです。
本記事が、FXでトレードをしている人や、これからトレードをしようと考えている人の参考になれば、幸いです。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました!