日本は1990年前後に起こったバブル崩壊を境にして、長期のデフレが進んでいますが、この先も「インフレ」が起こらないということは、決してありません。
下のグラフはアメリカのセントルイス連銀で見ることのできる日本の長期に渡る消費者物価上昇率(1961年から2014年までの約50年)の推移ですが、ご覧いただきました通り、日本がデフレに悩んでいるのは、1990年以降のことで、それ以前には、かなり激しいインフレがあったことが分かります。
参考/Inflation, consumer prices for Japan -FRED® Economic Data-
また、産業革命以降、先進国として繁栄を続けるイギリスの超長期チャート(1694年-2016年)でも、政策金利が5%を超えるような水準にあった時期の方が、そうでない時期よりもかなり長いことが分かります。(2009年以降の低金利時代が、いかに歴史的に見ても異例の低金利時代であるかを物語っています。)
参考/Monetary Policy Committee Decisions, Minutes and Forecasts -Bank of England-(チャートは、当サイトの編集部で加工)
では、今後、インフレが再び日本に訪れると仮定し、そのときにどういったことが起こるのかを想定しますと、例えば不動産や株式などのリスク資産の値上がり、債券価格の下落、金利の上昇などは、すぐに思い浮かぶかと思います。
また、専門家によっても意見が分かれていますが、為替レートで円安が大幅に進む可能性も十分にあります。
円高であれば、円の価値が相対的に外貨に対して高いということなので、資産運用上、資産のほとんどを円で保有することは問題はありませんが、ただ、インフレも含めて、今後、日本円が円安に進むだけの要因は十分にありますし、また、そのときのために日本円以外の通貨を保有しておくことは、資産のリスクヘッジにもなり得ます。
そこで、今回は円安が進む材料を幾つかピックアップした後、そのときの対策としての外貨投資、そして、その外貨投資を低コストで行うためのFXを利用する方法を説明していきたいと思います。
大幅な円安になる材料
では、この先、円安が進む可能性としては、どういった要因が考えられるかを見ていきましょう。
〇日本の財政赤字への懸念⇒債券が売られる⇒円が売られる⇒円安に
日本の財政赤字が巨額に上ることはご存知の方も多いと思いますが、財務省の「日本の財政を考える」というサイトを見ると、「この先、大丈夫なんだろうか・・」と不安になってしまうほど、公債残高は膨れ上がっています。
こうした日本の財政赤字への懸念は、海外の専門家やシンクタンク、格付け機関からも度々、”危ぶむ”声が挙がっておりまして、何かのきっかけで、日本国債への信認が大きく揺らぐようなことが起こると、「債券、株式、円のトリブル安=日本売り」が大きく進んでしまう可能性も決して否定はできません。(国債の保有者の大半が日本の金融機関なので、当面は大丈夫という意見もあります。)
〇大幅な人口減少⇒日本への将来への懸念⇒円が売られる⇒円安に
また、日本の少子高齢化が長期的には、円安の材料になる可能性も否定できません。
下記は、内閣府が公表している「高齢化白書」からの引用ですが、2060年には、日本の人口は8,674万人にまで減少することが推計されています。
人口減をカバーするようなロボット開発や、あるいは、人類の寿命がさらに延びるような医療の進歩があることも予想されますので、過度な悲観は禁物ですが、仮に、内閣府の推計通りに進むとしますと、日本の成長力が低下し、「日本売りとしての円売り=円安」が長期的に進む可能性は、決して低いとは言えないでしょう。
〇商品インフレ発生⇒現金としての円の価値の低下⇒資本流出
今後、何かのきっかけで原油や金属などの商品インフレが起こり、それが日本に波及し、日本の不動産や株価が上昇すると、相対的に現金の価値は下がるため、円の減価を嫌って、外貨に換えようとする動きが強まるという可能性もあります。
過去、大幅なインフレが亢進した国では、自国の通貨よりも基軸通貨としての米ドルへの信認の方が厚くなる傾向にあり、日本で同じような高いインフレが発生した場合、円安が進む可能性があります。
〇円安による輸入コストの増加⇒インフレが進行⇒ますます円安に
また、理由を問わず今後、何かのきっかけで突発的なインフレが起きたときに、期待インフレが円安を急激に進行させるという可能性もあります。
例えば、これまで1ドル100円の為替レートのときに、1台100万円でアメリカから自動車を輸入できていたとします。
それが、何かのきっかけで急激に円安が進み、1ドル=150円になったとすると、これまで1台100万円のお金で購入できていた車に対して、1台150万円のお金が必要になります。
そして、上記のようなことが起こると、消費者や企業は「この先、為替レートが170円や200円と、どんどん円安になるのでは?」という思考が働き(将来の「期待インフレ」が上昇)、円を売って、ドルを買うような動きがますます活発化して、円安が加速するという流れになります。
経済は、人のマインドによって大きく影響されることがありますので、こうした「期待インフレ」の加速により、円安が起こる可能性も十分に考えられます。
リスク分散としての外貨投資
ここまで長期的な円安や大幅な円安など”悪い”円安になる要因を幾つかピックアップしてきましたが、筆者は、いたずらに日本が円安になる可能性を”あおる”つもりは全くなく、むしろ、円が今後も安定的に推移してくれることを祈っています。
しかし、ときとして相場は暴騰や暴落を繰り返すことがあり、大幅な円安がこの先、日本で起こらないとは、誰も言い切れません。
そして、そのときになって、「少しでも外貨への投資を行っておけば良かった・・・」と言っても悔やんでも悔やみきれません・・・。
そう考えますと、大切な資産の一部を米ドルやポンド、ゴールドよりも固いと言われているスイスフラン、あるいは、ユーロ、豪ドル、NZドルといった通貨へ分散して保有しておくというのは、十分、検討に値するアイデアの一つだと考えられます。
基軸通貨である米ドルが外貨投資としては、最有力の候補であることは多くの方が賛同するのではないかと思いますが、ただ、相場には絶対はありませんので、可能であれば、複数の通貨へ分散投資を行うことが賢明かと思います。
レバレッジ1倍の証拠金によるFXでの運用と外貨投資
では、実際に外貨投資を行うとすると、どういった方法が考えられるかと言いますと、銀行での外貨預金あるいは、FXということになるかと思います。
そこで、「FXと外貨預金には、どんな違いがあるのか」ということを当サイトの編集部で、まとめたものが下記になります。
FX | 外貨預金 | |
---|---|---|
取引先の金融機関 | FX会社または証券会社 | 銀行 |
取引方法 | 外貨の売り注文も買い注文の両方可能 | 外貨の買い注文のみ |
取引レート | リアルタイムのレートで取引が可能 | 1日1回変更(銀行が指定したレートでの取引) |
取引手数料(スプレッド含む) | 0.27銭~ | 片道1円~ |
取引時間 | 24時間/土日以外は祝日でも取引可能 | 銀行の営業時間のみ |
取引期限 | 期限の定めなし | 外貨定期預金は満期あり |
為替変動による利益 | 円高・円安のどちらでも利益を出すことが可能 | 買ったプライスよりも円安に動いた場合 |
金利収入 | 1日単位で収入を得ることが可能 | 原則、満期時または解約時 |
資金効率 | 個人の場合最大25倍のレバレッジ運用可能 | レバレッジ運用不可 |
取り扱い通貨 | 主要通貨から高金利通貨まで幅広い | 主要通貨のみ |
リスク | 為替変動による損失リスク及びレバレッジ | 為替変動による損失リスク |
リスク管理 | 損失管理が可能 | 短期的な大変動があっても損失管理ができない |
資金の安全性 | 全額または一部信託保全が義務付け | 預金保護制度の対象外 |
参考/FXと外貨預金の違いを徹底比較!どっちがメリットあるの?
また、FXは証拠金取引だから、何となく危険というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、実際には、レバレッジ1倍で運用するのであれば、外貨預金とほとんど変わらないばかりか、FXの方が数多くのメリットがあることがお分かり頂けるかと思います。
参考/レバレッジ1倍の証拠金によるFXでの運用と外貨預金の比較のまとめ
まとめ
「長期的な円安対策に・・外貨投資としてFXを利用する」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
筆者自身、もともとは日本株への投資を中心に資産運用をはじめましたが、運用資産が増えるにつれて、リスク分散のために、資産の一部を外貨での運用、それも取引期限のないFXでの低レバレッジ運用へと移行してきた経緯があったことから、今回の記事を執筆いたしました。
本記事が、大幅な円安や、長期的な円安に備えて、外貨投資を検討されている方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。