FXと不動産投資のどちらかで、これから資産運用をはじめてみたいと考えていたり、あるいは、どちらかは運用経験があるけど、一方では運用経験がないという人にとって、「FXと不動産投資ってどっちがいいの?」というのは、ごく自然に沸いてくる疑問ではないでしょうか。
そこで、今回はFXと不動産投資のどちらも経験のある筆者が、FXと不動産投資を徹底比較してみました。
では、早速見ていきましょう。
投資環境としてはFXが断然有利・・だけど・・
これから、FXと不動産投資のどちらがいいのかという説明をしていきたいと思いますが、その前にズバリ、結論から申し上げますと、投資環境としては圧倒的にFXが有利です。
ただし、万人に正解と言える投資法がないように、FXと不動産投資のどちらに「適性」があるかは、最終的には、本人の性格や考え方次第になります。
実際に、投資で成功を収めている人は、FXと不動産投資、どちらにも存在しますし、また、投資での成功の定義もまた、人それぞれです。
なお、本記事では、不動産投資が有利な点は、有利な点として中立的な視点で執筆することを心掛けていますが、当サイトは「FXをはじめるためのサイト」のため、多少バイアスが掛かっている可能性がございます。
その点については、読者の方が読み進めていく中で、ご判断いただければと思います。
では、そうした点を踏まえて、まずは、編集部で、FXと不動産投資の違いを一覧としてまとめた下記の表をご覧ください。
FX | 不動産投資 | |
---|---|---|
運用をはじめるまで | 簡単 | 難しい |
資金 | 小額からOK | ある程度、まとまった資金が必要 |
取引対象 | 少ない | 多い |
取引方法 | 売り注文・買い注文の両方可能 | 買いのみ |
流動性 | 高い(24時間/土日以外は祝日でも決済可能) | 低い(売買に時間がかかる) |
情報へのアクセス | 簡単 | 難しい |
どちらが儲かる? | トレード方法次第 | 物件次第 |
キャッシュフローによる収入 | 1日単位で収入を得ることが可能 | 家賃収入 |
レバレッジ | 個人は最大25倍 | 借り入れ次第 |
投資対象の消失(毀損)リスク | ほぼゼロ | 地震リスクや空室リスク |
維持管理のための追加コスト | 不要 | 必要(修繕費、広告費など) |
取引コスト | 安い | 高い |
値動き | 小さい | 大きい |
元本以上の損失を抱えるリスク | 低い | 借り入れを行っている場合は有り |
順番に見ていきましょう。
運用をはじめる難しさは、FXが圧倒的にハードルが低い
FXと不動産投資の運用をはじめるにあたって、どちらが運用のハードルが高いかということになりますと、それは、もう圧倒的にFXになります。
〇運用をはじめるまでの資金量
FXをはじめるには、10万程度の元手があれば、口座開設を行ってから数日後には、もうはじめることができますが、不動産投資の場合(ボロ物件投資やワンルームアパート投資も含む)は、どんなに少なく見積もっても、100万円程度の資金は必要になります。
〇取引対象の数
FXでは、米ドル、日本円、ユーロ、ポンド、豪ドル、NZドル、スイスフラン、カナダドルなどのメジャー通貨を含めて、せいぜい投資対象となるのは10~20通貨ほどですが、不動産投資は、それこそビル一棟投資から、マンション投資まで無数とも言える投資対象が存在しますので、取引対象を選択する時間を考えますと、圧倒的にFXの方が、投資しやすい環境が整っているということが言えます。
〇取引方法について
不動産は基本的に、どんなに高い値段がついていても基本的には「買い」注文からしか入ることができません。不動産の価格が異常なくらい値上がりしていても、それに対して、直接「売り」から入ることはできません。
考えられる代替方法として、不動産会社の株やREIT(不動産投資信託)を信用取引で「売り」から入ったりすることぐらいしかできません。
では、FXの方はと言いますと、「売り」から注文するのも、「買い」から注文するのも自由自在です。
取引方法の選択肢としてはFXが断然、有利と言えます。
〇流動性について
FXの取引の舞台である為替市場は、土日以外は基本的に24時間、取引することが可能になっておりまして、自分が建てたポジションはほぼ、いつでも決済できますし、また、億を超えるようなまとまった金額を動かしても、FXでは、それで値が動くということはまず、ありません。
つまり、巨大な流動性があるため、FXではポジションを決済することができないということは、よほどのマイナー通貨でない限り、起こりません。
一方、不動産投資の方は、買うまでにも時間がかかりますが、それを一旦、保有した後、売りたいと思うと、その買い手を探すのも簡単にはいきません。
投資をするにあたって、流動性は極めて重要な要素の一つですが、その点については、FXがかなり有利な状況となっています。
〇情報へのアクセスについて
投資を始めるには、何かの情報を参考にして、投資を行うことがほとんどだと思いますが、FXでは、ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析は充実していますし、為替の変動要因になりやすい、各国の中央銀行の金融政策、国の経済政策、要人発言などの情報にも、簡単にアクセスすることが可能です。
一方、不動産投資の場合は、投資の判断の元となる情報源は、非常に限定的です。
もちろん、土地の公示価格、オフィスの稼働率などの参考になるマクロ指標はありますが、実際に投資を決断するに値する情報は、不動産会社や自分で足で稼いだ情報などが元になりますので、情報へのアクセスのしやすさという意味では、かなりハードルが高いということが言えるかと思います。
運用をはじめるまでの難しさのまとめ
FXと不動産投資、運用をはじめるまでの難しさ=ハードルの高さについては、ご覧いただきました通り、FXの方が投資環境という意味では、かなり有利になっていることがお分かり頂けるかと思います。
ただし、投資環境としてそれだけハードルが高い不動産投資は、逆の見方をすれば、投資にかける時間と情熱がある人にとっては、利益の源泉となる「優位性」を見い出せるチャンスも存在するということにもなります。
ただ、それは不動産投資に、それだけの時間と情熱を注ぐことができる人に限られるということは、憶えておいて欲しいと思います。
FXと不動産投資、どちらが儲かる?
FXと不動産投資のどちらが儲かる?という点については、大きく分けて2つの見方ができます。
一つは、FXのスワップ金利や家賃収入のように、毎月コツコツと儲ける場合と、もう一つはトレーディングで大きな利益を狙う場合です。
順番に見ていきましょう。
FXと不動産投資、どちらが儲かる?~毎月コツコツ派の場合~
元本を増やしたいというよりは、元本を利用して、毎月あるいは1年ごとに、コツコツと儲けたいという場合、それぞれで考えられる選択肢としては、家賃収入狙いの不動産投資、そしてFXでは2国間の金利差を利用したスワップ金利狙いのトレードということになるかと思います。
〇キャッシュフローによる収入
不動産投資の利回り(家賃収入-借入の支払い)は、6~10%といった水準が一つの目安で、家賃収入が入り続けている間は、毎月コツコツと収入を確保することができます。
不動産投資の場合、自己資金を減らし、借り入れ金額を増やせば、実質、レバレッジをかけることができますので、腕に自信のある方であれば、利回りを20~40%程度まで伸ばすことができるのは、不動産投資ならではの魅力です。
ただ、住居用にしても、オフィス用にしても、空室リスクがありますので、20~40%程度の利回りを継続するのは決して簡単なことではありません。
また、借り入れ金利が変動金利の場合、インフレが起こったときに、家賃を上回る利払いが発生したりして、”逆ザヤ”になるというリスクも忘れてはいけません。
では、FXのスワップ金利狙いのトレードは言いますと、レバレッジを利用できるため、金利収入もそれに応じて、増やすことができます。(スワップ派と呼ばれるトレーダーで、その中でもより保守的なトレーダーでも、1.5倍~2倍のレバレッジを使い、スワップ金利収入を1.5~2倍近くにしている人は少なくありません)
そして、FXで得られる利回りについては、どういった通貨に投資するかによっても変わってきますが、例えば、NZドルや豪ドル、ランド、トルコリラといった高金利通貨にレバレッジ1.5~2倍で分散投資をして得られる年間の利回りは、「5~15%」辺りになるかと思います。
ただし、FXのスワップ狙いのトレードの場合、各国の金利変動リスクがありますので、その点はリスク要因になるかと思います。
〇投資対象の消失リスクについて
投資を行うときには、様々なリスクがありますが、その中に投資対象の消失リスクがあります。
投資対象が企業であれば、倒産リスク、外貨であれば、国の通貨の価値が暴落するリスク、不動産であれば、災害などによる消失するリスクです。
そして、消失リスクという意味ではFXの場合、投資対象が国の通貨になりますので、一つの不動産と比べますと、投資対象としての消失リスクは、極めて低くなっています。(例えば、オーストラリアは世界GDPランキングで10位前後の規模を誇る経済大国の一つです。)
もちろん、ジンバブエのような特定の国でハイバーインフレが起こり、通貨の価値が著しく低下するという可能性は否定できませんが(そもそも、ジンバブエのような国にはFXでは投資ができない)、複数の外貨に分散投資したり、そういったカントリーリスクの高い通貨への投資を避けるといった方法で、消失リスクを回避することは、十分可能です。
〇維持管理のための追加コスト
FXでスワップ金利を狙ったトレードでは、レバレッジ管理をしっかりと行い、ポジションを一旦、保有してしまえば、あとは、追加資金やそれを維持するためのコストは一切、必要ありません。
FXでは、口座管理手数料も入出金手数料もほとんどの会社が無料にしていますので、維持管理のコストを全くかけることなく、土日も含めて一日単位で口座に入金されるスワップ金利をいつでも好きなときに引き出せて、好きなだけ使うことができます。(※正確には、FX会社により異なります)
一方、不動産投資は、空室が出れば広告費、不動産会社への仲介手数料、そして、保有物件が古くなってくれば修繕費、最新のネット回線が普及すると、それを導入するための工事費など、とにかく維持管理コストが次から次へと必要になってきます。
これは、一度でも不動産投資をした人であれば、誰もが通る道ですが、維持管理コストが予想以上に、そして、度々収益を圧迫します。
キャッシュフローによる収入のまとめ
毎月、コツコツと利益を稼ぐという方法を選択する場合、FXと不動産投資を比較しますと、収益性、資金効率、取引コスト、リスクなども考慮しますと、FXの方がかなり有利な投資環境にあるということはお分かり頂けるかと思います。
FXと不動産投資、どちらが儲かる?~大きく稼ぎたい場合~
では、続いてより大きな利益を目指す場合について見ていきたいと思います。
具体的に、それを実現する方法としては、FXでは為替変動による利益、不動産投資では土地の売買による利益のことになります。
では、どちらが有利なのかということを、ざっくりとイメージするために、下のような計算式で全体像を掴んで行きたいと思います。
レバレッジ×値動き×取引時間×トレード回数×取引コスト
順番に見ていきましょう。
〇レバレッジ×値動き
FXではレバレッジを25倍まで上げることができるものの、ある通貨ペアが、短期間で±10%近く変動するということはあっても、数年単位で特定の通貨ペアで2倍~3倍の変動が起こるということは、ほとんどありません。
そのため、FXで大きな利益を短期間で手に入れるためには、大きなトレードを何度も成功させる必要があり、決して簡単なことではありません。
一方、不動産投資は、自己資金を減らし、借り入れを増やせば、レバレッジを高めることができる上に、投資したタイミングによっては(例えば、アベノミクスが始まる直前の2012年に買い付けるなど)、1.5倍、2倍と大きく値が”飛ぶ”ことがありますので、数年の間に、大きな利益を手にすることができるチャンスがあります。
為替変動による利益と、不動産売買による利益で、より大きな利益を上げるチャンスがあるとすると、タイミング次第では、不動産の方が有利と言えるかと思います。
では、取引できる時間、トレード回数、取引コストはどうでしょうか?
〇取引時間×トレード回数×取引コスト
為替相場は土日以外は24時間、市場がオープンしておりまして、日本が祝日でも相場は動いていることがほとんどです。(FXでは、日本の夜に開いているロンドンタイムやNYタイムの方が東京タイムより、むしろ流動性が高く、マーケットが動きやすい)
そのため、FXでは、勝てるアイデアがあれば、トレードする回数は幾らでも増やせる環境が整っていますので、収益を挙げる機会はかなり多いと言えます。
一方、不動産の場合は、よほどの資産家でない限り、買って売ってを簡単に繰り返すことはできません。
そういった意味では、取引できる回数はFXに比べて、かなり少なく、また、途中で失敗したと思っても、簡単には、これまでの投資をやめて、新しい投資に移行するということができません。
そして、取引コストについては、FXが圧倒的に有利という状況です。
例えば、FXで国内1、2位を争っているDMM FXやGMOクリック証券
で必要となる取引コストは、実質、スプレッドのみで、例えば、ドル/円を1LOT=1万通貨取引して必要となるコストは、たったの30円に過ぎません。
一方、不動産の場合は、仲介手数料、登記費用、広告費など、売買の度に、かなりの取引コストがかかります。
では、改めて、先ほどの計算式を眺めてみますと・・・
レバレッジ×値動き×取引時間×トレード回数×取引コスト
レバレッジ×値動きでは、FXよりも不動産投資が有利、取引時間×トレード回数×取引コストという部分では、FXの方が有利ということが言えまして、大きく利益を狙うという意味では、甲乙つけがたいといったところが結論ではないかと思います。
元本以上の損失リスクについて
では、続いてFXと不動産投資の元本損失リスクについて見ていきましょう。
FXでは、値動きがそれほど大きくないこと、24時間いつでもポジションが決済できること、そして必要証拠金(維持率100%)を割り込んだ後の強制決済や、証拠金維持率50%割れによる自動ロスカットがあるため、よほどのことがない限りは、元本以上の損失を抱えることはありません。
元本以上の損失を抱える最も典型的なパターンは、為替相場が休場となる週末に、想像をはるかに超えるような事態が発生し、月曜の市場オープンのときに、大きく為替レートが飛んだときがそれになります。
一方で、不動産投資の場合は、例えば、維持管理コストが掛かったりして、当初の想定より利回りがマイナスになって、途中でその投資を止めてしまった場合、売買代金による損失、手数料などの取引コスト、借入金の返済などを全て計算すると、赤字、つまり、当初の元本を超える損失を発生するということは決して珍しくありません。
不動産投資の損失リスクについては、”ふた”を開けてみないと分からないことが多いですが、マンションやアパートなどの上物については、価値は時間の経過とともに減っていきますので、途中で投資を中断してしまった場合、ほとんどのケースで、元本である頭金が戻ってくれば、”マシ”と言っても、過言ではありません。
まとめ
今回は「FXと不動産投資ってどっちがいいの?FXと不動産投資を徹底比較」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
投資環境という意味では、FXがかなり有利であることがお分かり頂けたかと思います。
ただ冒頭でも申し上げましたが、投資環境が有利・不利ということと、どちらの投資に適性があるかということは別ですので、どちらが自分にとって、適性があるのかということについては、本人の性格や資質と相談して判断していただければと思います。
ちなみに、筆者はささやかな不動産投資を行っておりますが、近年は、ほとんど利益を上げることができていません・・・(^^;)
「不動産投資とFX、どっちがいいのか?」ということを考えている読者の方に、本記事が少しでもお役に立てれば、幸いです。