太平洋と大西洋を繋ぐという意味から別名「ケーブル」の異名を持つポンド/ドル。
日本のFXにおいても、そのボラティリティの高さなどから、短期トレーダーの中には好んで取引対象としている人も少なくありません。
今回は、そんなポンド/米ドルを米国の利上げと利下げをベースにサイクル分析で予想する方法について、説明してみたいと思います。
では、早速、見ていきましょう。
米国のFFレートとポンドドル相場
早速ですが、まずはアメリカのFFレートとポンド/米ドルの長期チャートをご覧ください。
FFレートは1971年から2016年2月までの長期チャートになります。
出典/セントルイス連銀-Effective Federal Funds Rate-
続いて、ポンド/米ドルの長期チャートをご覧ください。
出典/セントルイス連銀-U.S. / U.K. Foreign Exchange Rate-
では、上記のチャートをベースに、米国の利上げ・利下げの後に、ポンドドルがどのように動いてきたかということを、それぞれもう少し詳しく見ていきましょう。
米国の利上げとポンド/米ドル相場のサイクル
アメリカの利上げとポンドドル相場の関係を見ていくために、まずは米国が過去に行った利上げと利下げについて時系列で確認しておきたいと思います。
1971年から直近の2015年の12月の利上げ開始まで、アメリカが行った利上げ開始時期と利下げ開始時期は下記の通りとなっています。
米国の利上げ開始時期 | 米国の利下げ開始時期 |
---|---|
1973年1月 | 1974年12月 |
1977年9月 | 1980年5月 |
1980年9月 | 1981年11月 |
1984年4月 | 1984年11月 |
1987年9月 | 1990年10月 |
1994年2月 | 1995年7月 |
1997年3月 | 1998年9月 |
1999年6月 | 2001年1月 |
2004年6月 | 2007年9月 |
2015年12月 | - |
このうち、アメリカが高いインフレに悩んでいた1980年から1984年を例外期間として調整(除外)し、そして利上げとポンド/米ドルの関係をチャートにしたものが下記になります。
緑の丸が利上げ開始、紫色の丸がポンド/米ドルの天井(ポンド高米ドル安)、青色の丸がポンド/米ドルのボトム(ポンド安米ドル高)を指しています。
1973年1月から2015年12月までにアメリカが行った利上げは、計10回。
そのうち、10%を超える高いインフレ時期を除く8回の利上げ開始を抽出して、その後のポンドドルの動きをチャート上に表示しました。
まず、最初のポイントはアメリカが過去1973年から行った計8回の利上げのうち、実に7回の利上げで、ポンドドルは、利上げ開始から半年から約3年程度、ポンド高米ドル安が発生していることが確認できます。(紫色の丸)
そして、天井を付けた後は、一転、利上げを開始した水準以下まで、今度は米ドル高ポンド安が巻き起こり、ボトムをつけているのが確認できます。(青い丸)
以上のことから、ポンドドルと米国の利上げの間には、次のようなサイクルを見出すことができます。
〇アメリカが利上げを行ってから、半年から最長3年程度でポンドドルは天井をつける
〇その後は、アメリカが利上げを行った水準以下までポンド安米ドル高が進む
〇なお、天井をつけずに、利上げ直後からポンド安米ドル高がそのまま進むときもある
〇ただし、アメリカのFFレートが10%を超えるインフレ期にあるときはこのサイクルは機能しない
では、続いてアメリカの利下げとポンドドルについて、見ていきましょう。
米国の利下げとポンド/米ドル相場のサイクル
先ほど同様、まずは1971年から直近の2015年の12月の利上げ開始まで、アメリカが行った利上げ開始時期と利下げ開始時期を確認しておきましょう。
米国の利上げ開始時期 | 米国の利下げ開始時期 |
---|---|
1973年1月 | 1974年12月 |
1977年9月 | 1980年5月 |
1980年9月 | 1981年11月 |
1984年4月 | 1984年11月 |
1987年9月 | 1990年10月 |
1994年2月 | 1995年7月 |
1997年3月 | 1998年9月 |
1999年6月 | 2001年1月 |
2004年6月 | 2007年9月 |
2015年12月 | - |
上記の表からアメリカが利下げを開始した時期に赤丸を、その後につけたポンド安/米ドル高に青丸をつけました。
利下げとポンドドルの関係は、利上げに比べると非常にシンプルで、アメリカがFFレートで10%を超過するインフレ期でなければ、アメリカが利下げを行うと、例外なく、利下げ開始後、ポンド安米ドル高が始まります。
そして、その期間は最短でも約6ヶ月、長ければ約1年程度、ポンド安米ドル高が続くことになります。
以上のことから、ポンドドルと米国の利下げの間には、次のようなサイクルを見出すことができます。
〇アメリカが利下げを行ってから、半年から1年程度はポンド安ドル高が進む
〇ただし、アメリカのFFレートが10%を超えるインフレ期にあるときはこのサイクルは機能しない
トレードとしては、アメリカが利下げを行えば、とにかくポンド/米ドルを数ヶ月から半年程度は「売り」で狙うという戦略を立てることができそうです。
おまけ-ポンド/米ドル相場は8年ごとにボトムアウト-
さて、ここまでポンドドル相場について、米国の政策金利をベースにサイクル分析を行ってきましたが、最後に”おまけ”として、ポンド/米ドル相場のボトムアウト8年サイクルについて、触れておきたいと思います。
2016年早々に、イギリスがEUから脱退するというニュースが俄かにマーケットで注目を集め、それを材料に一気にポンドドルはポンド安/米ドル高が進んでいます。
このポンド安/米ドル高が、どの水準までいつまで進むのかということは、誰にも予想がつきませんが、一つのヒントとして、ポンドドルが過去8年ごとにボトムをつけてきたというサイクルは、興味深い示唆を与えてくれます。
もし、ポンドドルのボトムアウト8年サイクルが機能すれば、今回のポンド安米ドル高は、2009年につけたボトムから8年後の2017年のどこかでボトムアウトすることになります。
ボンドのボトムアウトを狙っているトレーダーの方に、参考になればと思いご紹介させていただきました。
最後まで、お読みいただきましてありがとうございました!