欧州の財政危機、イギリスのEU離脱など2010年以降、ボラティリティが上昇中のユーロポンド(EUR/GBP)
欧州時間に動き出すことが多く、日中はトレードができない人にもトレードチャンスがある人気の通貨ペアの一つになっています。
そこで、本記事では過去のユーロポンド(EUR/GBP)のトレンドの実態を探るべく、「月足」をベースにユーロポンドの陽線や陰線がどれだけ連続したことがあるのかということを回数や値動き、変動率でまとめてみました。
月足ベースでトレードの戦略を組み立てているという方などを対象に、トレードのヒントにして頂ければと思います。
では、早速見ていきましょう。
ユーロポンドの連続する月足陽線と月足陰線の回数~1997年から2016年~
下記は、1997年から2016年の月足チャートになります。
データ出所/GMOクリック証券
そして、上記のチャートをもとに、単純に陽線あるいは陰線が続いた回数をカウントしたのが、下記の表になります。
連続した数 (ユーロポンド) | 陽線 | 陰線 |
---|---|---|
3ヶ月 | 6回 | 9回 |
4ヶ月 | 1回 | 4回 |
5ヶ月 | 2回 | 1回 |
6ヶ月 | 0 | 2回 |
7ヶ月 | 1回 | 0 |
8ヶ月 | 1回 | 0 |
合計 | 9回 | 16回 |
筆者がまず最初に注目したポイントは、過去20年の間、3ヶ月以上続いた陰線が16回、陽線が9回というその回数の違いです。
回数にして約2倍弱となっていまして、過去20年、月足ベースで3ヶ月以上連続したのは、圧倒的にユーロ売りが多かったという事実は、EURGBPをトレードする際のエントリーポイントやクローズポイントを探る上で大いに参考になりそうです。
また、陽線にしても、陰線にしても、3ヶ月から4ヶ月で連続する動きが終了する確率は他の通貨ペアに比べて高いというのも特徴として挙げられます。(他の通貨ペアでは、陽線か陰線のどちらか、あるいはその両方で5ヶ月以上連続することが回数的にも少なくない)
上記のデータをもとにした順張りのトレード(連続する陰線や陽線を狙うトレード)のスタンスとしては、次で説明する「変動幅」を考慮することが前提となりますが、ユーロ買いポンド売り、ユーロ売りポンド買いのいずれも、3ヶ月~4ヶ月を目途にポジションを調整した方が良さそうです。
一方で逆張り(トレンドの反転を狙うトレード)で仕掛ける場合は、ユーロ売りポンド買いがやや長く続くケースがありますので、十分に引き付けてからエントリーした方が良さそうです。
連続する月足陽線と月足陰線の値幅と変動率~1997年から2016年~
では、続いては、上記の連続した陽線と陰線の値動きについて、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。
2ヶ月連続で続いた陽線と陰線は回数が多いため省略し、3ヶ月連続で陽線あるいは陰線が続いた期間と、その期間中の値幅と変動率について見ていきたいと思います。
〇連続した月足陽線の値幅と変動率
まず、最初にご覧いただくのはユーロポンドの連続した陽線の値幅と変動率になりまして、それを表にまとめたものが、下記になります。
連続した陽線 (ユーロポンド) | 値幅 | 上昇率 |
---|---|---|
2000.11~2001.1(3ヶ月) 始値0.58620⇒終値0.63960 | +0.0534 | +9.1% |
2001.6~2001.8(3ヶ月) 始値0.59590⇒終値0.62750 | +0.0316 | +5.3% |
2002.4~2002.6(3ヶ月) 始値0.61160⇒終値0.64670 | +0.0351 | +5.7% |
2002.10~2003.5(8ヶ月) 始値0.62920⇒終値0.72040 | +0.0912 | +14.49% |
2004.8~2004.10(3ヶ月) 始値0.66190⇒終値0.69670 | +0.0348 | +5.25% |
2007.2~2007.4(3ヶ月) 始値0.66300⇒終値0.68255 | +0.0195 | +2.94% |
2007.11~2008.4(5ヶ月) 始値0.69650⇒終値0.796060 | +0.09956 | +14.29% |
2008.10~2008.12(3ヶ月) 始値0.79134⇒終値0.95483 | +0.16349 | +20.65% |
2012.8~2013.2(7ヶ月) 始値0.78475⇒終値0.86108 | +0.07633 | +9.7% |
2015.12~2016.3(4ヶ月) 始値0.70154⇒終値0.79234 | +0.0908 | +12.94% |
2016.6~2016.10(5ヶ月) 始値0.76829⇒終値0.83263 | +0.06434 | +8.3% |
値上がりの大きさで目立つのは、リーマンショック直後から3ヶ月に渡ってリスク回避の動きから、ユーロが買われポンドが大きく売られた2008.10~2008.12(3ヶ月)の「+20.65%」やイギリスのEU離脱を巡る国民投票を前にポンドが大きく売られた2015.12~2016.3(4ヶ月)の「+12.94%」など、リスクを回避する局面において、期間や値幅、上昇率などでボライタルな値動きを見せています。
また、回数的には少ないですが、過去約20年間で、2002.10~2003.5(8ヶ月)や2012.8~2013.2(7ヶ月)のように半年以上陽線が連続することも稀に起こっており、ユーロ買いポンド売りトレンド相場終焉の節目については、ファンメンタルズやテクニカル分析などと合わせて、慎重に見極めたいところです。
では、続いては陰線の方も見てみましょう。
〇連続した月足陰線の値幅と変動率
連続した陰線 (ユーロポンド) | 値幅 | 下落率 |
---|---|---|
1997.2~1997.4(3ヶ月) 始値0.73484⇒終値0.69616 | -0.03868 | -5.3% |
1999.1~1999.5(5ヶ月) 始値0.70134⇒終値0.65035 | -0.05099 | -7.3% |
1999.8~2000.1(6ヶ月) 始値0.66090⇒終値0.60065 | -0.06025 | -9.2% |
2000.7~2000.10(4ヶ月) 始値0.62705⇒終値0.58655 | -0.0405 | -6.5% |
2004.1~2004.3(3ヶ月) 始値0.70530⇒終値0.66710 | -0.0382 | -5.5% |
2005.1~2005.4(4ヶ月) 始値0.70628⇒終値0.67431 | -0.03197 | -4.6% |
2005.8~2005.10(3ヶ月) 始値0.68955⇒終値0.67764 | -0.01191 | -1.8% |
2007.5~2007.07(3ヶ月) 始値0.68245⇒終値0.67368 | -0.0877 | -1.3% |
2009.4~2009.6(3ヶ月) 始値0.92563⇒終値0.89483 | -0.0308 | -3.4% |
2010.3~2010.6(4ヶ月) 始値0.89470⇒終値0.81876 | -0.07594 | -8.5% |
2011.11~2012.1(3ヶ月) 始値0.86149⇒終値0.83020 | -0.03129 | -3.7% |
2012.3~2012.5(3ヶ月) 始値0.83726⇒終値0.80260 | -0.03466 | -4.2% |
2013.11~2014.1(3ヶ月) 始値0.84695⇒終値0.82042 | -0.02653 | -3.2% |
2014.4~2014.9(6ヶ月) 始値0.82636⇒終値0.77907 | -0.04729 | -5.8% |
2014.12~2015.3(4ヶ月) 始値0.79592⇒終値0.72430 | -0.07162 | -9% |
2015.5~2015.7(3ヶ月) 始値0.73111⇒終値0.70310 | -0.02801 | -3.9% |
連続する陰線の値動きで目を引くのは、PIGSに代表されるユーロ圏の財政危機がマーケットを混乱させた2010.3~2010.6(4ヶ月)の「-8.5%」やユーロ圏で追加の金融緩和が行われた2014.12~2015.3(4ヶ月)の「-9%」で、どちらも短期間で一方的にユーロが売られました。
ただ、ユーロ買いポンド売りの局面に比べますと、ユーロ売りポンド買いの場合、値動きそのものはそれほど大きくはないという特徴があります。
ユーロポンドの陰線の連続月足トレードの変動幅の目途としては「-8~9%」、期間では連続「4ヶ月」あたりの数値を意識しておきたいところです。
ユーロポンドの連続する月足陽線と月足陰線の出現頻度について~1997年から2016年~
では、ここからは、連続する月足陽線と月足陰線を一つの”かたまり”としてみて、どんなときに月足陽線や月足陰線が続きやすいのかということを見ていきたいと思います。
それを確かめるために、上記でまとめた表を時系列で並べたものが下記になります。
赤色がユーロ高ポンド安、青色がユーロ安ポンド高を表しています。
こうして時系列で並べてみますと、幾つか興味深いことがありまして、例えば、ITバブル崩壊後のドル安局面では、ユーロが積極的に買われたことを背景に、4回連続で赤色が出ていまして、これは、月足で3ヶ月以上の連続する陽線が約2年半の間に、4回も出現するほどユーロが買われ、ポンドが売られたことを意味しています。(2000.11~2003.5)
また、2009年以降のユーロの財政危機、世界的な景気回復、資産インフレの局面では、2009年から2015年までの約6年間に渡って、3ヶ月以上の月足陰線が9回中8回出現するほどポンド高ユーロ安が続いたことが分かります。
月足以上の大きな流れを汲んで、息の長いトレードを仕掛ける場合、過去にこうした偏った動きがあったということは、大いに参考になりそうです。
まとめ
「ユーロポンドの連続する月足陽線と月足陰線の回数・値幅・変動率のまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
筆者は普段のトレードでは、ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析、そしてアノマリーに近い値動き分析などをもとにトレードを仕掛けていますが、今回、ユーロポンドの月足の連続陽線と陰線を調べてみて、十分、勝算があるトレードを幾つか組み立てることができるように感じました。
例えば、3ヶ月から4ヶ月に渡って約10%近くユーロが売られたときのリバウンド狙いなどは、リスクリターンで見ても狙う価値がありそうです。
読者の方にとっても、今回の分析が少しでもトレードのヒントになれば、幸いです。
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました!