ユーロドルとドル円の合成通貨「ユーロ円」
合成通貨ではあるものの、東京時間にはユーロ円そのものの取引もあることから、独自の値動きを見せることも少なくありません。
そこで、本記事では過去のユーロ円(EUR/JPY)のトレンドの実態を探るべく、「月足」をベースにユーロ円の陽線や陰線がどれだけ連続したことがあるのかということを回数や値動き、変動率でまとめてみました。
月足ベースでトレードの戦略を組み立てているという方などを対象に、トレードのヒントにして頂ければと思います。
では、早速見ていきましょう。
ユーロ円の連続する月足陽線と月足陰線の回数 -1997年~-
下記は、1997年から2017年の月足チャートになります。
データ出所/GMOクリック証券
そして、上記のチャートをもとに、単純に陽線あるいは陰線が続いた回数をカウントしたのが、下記の表になります。
連続した数 (ユーロ円) | 陽線 | 陰線 |
---|---|---|
3ヶ月 | 9回 | 6回 |
4ヶ月 | 6回 | 2回 |
5ヶ月 | 2回 | 4回 |
6ヶ月 | 2回 | 0 |
7ヶ月 | 0 | 1回 |
合計 | 19回 | 13回 |
筆者がまず最初に注目したポイントは、過去約20年の間、ユーロ円では3ヶ月以上続いた「陽線」が回数的にも多くなっているという点です。
2010年以降もユーロの財政危機やリーマンショック、イギリスのブレクジットなど度々、欧州の危機が報じられてきていますが、長期的にはドイツを中心としてヨーロッパ、ひいてはユーロの通貨としての競争力の強さを物語るような結果となっています。
一方で、「陰線」はトータルで見た回数こそ少ないものの、5ヶ月続いた陰線が4回、7ヶ月続いた陰線が1回という”長さ”に特徴的な動きが見られます。
上記のデータをもとにした順張りのトレード(連続する陰線や陽線を狙うトレード)のスタンスとしては、次で説明する「変動幅」を考慮することが前提となりますが、ユーロ買い円売りの場合は3~4ヶ月を、ユーロ売り円買いの場合は5ヶ月を目途にポジションを調整した方が良さそうです。
また、逆張り(トレンドの反転を狙うトレード)で仕掛ける場合は、ユーロ売り、ユーロ買いのいずれも、5ヶ月~6ヶ月は引き付けてからエントリーを検討したいところです。
連続する月足陽線と月足陰線の値幅と変動率 -1997年~-
では、続いては、上記の連続した陽線と陰線の値動きについて、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。
2ヶ月連続で続いた陽線と陰線は回数が多いため省略し、3ヶ月連続で陽線あるいは陰線が続いた期間と、その期間中の値幅と変動率について見ていきたいと思います。
〇連続した月足陽線の値幅と変動率
まず、最初にご覧いただくのはユーロ円の連続した陽線の値幅と変動率になりまして、それを表にまとめたものが、下記になります。
連続した陽線 (ユーロ円) | 値幅 | 上昇率 |
---|---|---|
1997.8~1997.12(5ヶ月) 始値127.27⇒終値143.56 | +16.29 | +12.79% |
1998.2~1998.5(4ヶ月) 始値136.49⇒終値153.06 | +16.57 | +12.14% |
2000.5~2000.7(3ヶ月) 始値98.32⇒終値101.28 | +2.96 | +0.301% |
2000.11~2001.1(3ヶ月) 始値92.44⇒終値108.89 | +16.45 | +17.79% |
2001.9~2001.12(4ヶ月) 始値108.24⇒終値117.31 | +9.07 | +8.37% |
2002.9~2003.1(5ヶ月) 始値116.37⇒終値128.98 | +12.61 | +10.83% |
2003.3~2003.5(3ヶ月) 始値127.41⇒終値140.52 | +13.11 | +10.28% |
2005.6~2005.8(3ヶ月) 始値133.57⇒終値136.55 | +2.98 | +2.2% |
2006.3~2006.8(6ヶ月) 始値137.99⇒終値150.41 | +12.42 | +0.9% |
2006.11~2007.1(3ヶ月) 始値149.27⇒終値157.26 | +7.99 | +5.35% |
2007.3~2007.6(4ヶ月) 始値156.83⇒終値166.76 | +9.93 | +6.33% |
2008.4~2008.7(4ヶ月) 始値157.37⇒終値168.36 | +10.99 | +6.98% |
2011.1~2011.4(4ヶ月) 始値108.415⇒終値120.222 | +11.80 | +10.89% |
2012.1~2012.3(3ヶ月) 始値99.52⇒終値110.519 | +10.999 | +11.05% |
2012.8~2013.1(6ヶ月) 始値96.109⇒終値124.502 | +28.393 | +29.54% |
2013.9~2013.12(4ヶ月) 始値129.915⇒終値144.726 | +14.811 | +11.40% |
2014.9~2014.11(3ヶ月) 始値136.75⇒終値147.692 | +10.942 | +8.0% |
2015.4~2015.6(3ヶ月) 始値128.881⇒終値136.533 | +7.652 | +5.93% |
2016.10~2016.12(3ヶ月) 始値113.874⇒終値122.965 | +9.09 | +7.98% |
値上がりの大きさで目立つのは、ITバブル崩壊前後でドルが大きく売られ、ユーロが買われた2000.11~2001.1(3ヶ月)の「+17.79%」やアベノミクス相場の初動で大きく円が売られた2012.8~2013.1(6ヶ月)の「+29.54%」などがあります。
また、2012年以降は、2013.9~2013.12(4ヶ月)や2014.9~2014.11(3ヶ月)、2016.10~2016.12(3ヶ月)など年の後半に度々、陽線が連続していまして、ファンメンタルズやテクニカル分析などと合わせて、季節性なども頭に入れておきたいところです。
なお、ここ20年の連続する陽線の値幅水準については、「+10~12%前後」が一つの目安となりそうです。
では、続いては陰線の方も見てみましょう。
〇連続した月足陰線の値幅と変動率
連続した陰線 (ユーロ円) | 値幅 | 下落率 |
---|---|---|
1997.4~1997.7(4ヶ月) 始値144.39⇒終値127.21 | -17.18 | -11.9% |
1998.12~1999.4(5ヶ月) 始値132.74⇒終値126.2 | -6.54 | -5% |
1999.6~1999.12(7ヶ月) 始値126.6⇒終値102.93 | -23.67 | -18.7% |
2003.6~2003.8(3ヶ月) 始値140.11⇒終値128.35 | -11.76 | -8.4% |
2008.1~2008.3(3ヶ月) 始値163.69⇒終値157.37 | -6.32 | -3.9% |
2008.8~2008.11(4ヶ月) 始値168.37⇒終値121.18 | -47.19 | -28.1% |
2009.7~2009.9(3ヶ月) 始値135.20⇒終値131.313 | -3.887 | -2.9% |
2010.4~2010.6(3ヶ月) 始値126.246⇒終値108.201 | -18.045 | -14.3% |
2010.10~2010.12(3ヶ月) 始値113.857⇒終値108.579 | -5.278 | -4.7% |
2011.5~2011.9(5ヶ月) 始値120.248⇒終値103.099 | -17.149 | -14.3% |
2014.4~2014.8(5ヶ月) 始値142.113⇒終値136.692 | -5.421 | -3.82% |
2015.7~2015.11(5ヶ月) 始値136.473⇒終値130.016 | -6.457 | -4.8% |
2017.1~2017.3(3ヶ月) 始値122.806⇒終値118.662 | -4.144 | -3.4% |
連続する陰線の値動きで目を引くのは、リーマンショック前後でリスク回避のドル買い、円買いが急速に進んだ2008.8~2008.11(4ヶ月)の「-28.1%」やPIGSに代表されるユーロの財政危機でユーロが大きく売られた2011.5~2011.9(5ヶ月)の「-14.3%」で、どちらも短期間で一方的にユーロ売りが進み、日本円が買われています。
ユーロ円の陰線の連続月足トレードの変動幅の目途としては「-5~15%」と、陽線に比べると、やや振れ幅が大きくなっておりますので、その点は注意しておきたいところです。
ユーロ円の連続する月足陽線と月足陰線の出現頻度について -1997年~-
では、ここからは、連続する月足陽線と月足陰線を一つの”かたまり”としてみて、どんなときに月足陽線や月足陰線が続きやすいのかということを見ていきたいと思います。
それを確かめるために、上記でまとめた表を時系列で並べたものが下記になります。
赤色がユーロ高円安、青色がユーロ安円高を表しています。
こうして時系列で並べてみますと、幾つか興味深いことがありまして、例えば、2000年のITバブル崩壊以降のドル安から、2007年の株高、資源高のピークに至るまでの約7年間においては、10回中9回で赤色が出ていまして、これは、月足で3ヶ月以上の連続する陰線(ユーロ高円安)が約7年の間に、頻発したことを意味しています。(2000.5~2007.6)
また、2008年以降のアメリカ発の金融危機からユーロ圏の財政危機が巻き起こった2008年から2011年の約3年半の期間には、3ヶ月以上の月足陰線が8回中6回、出現するなど、ユーロ安円高が続いたことが分かります。
月足以上の大きな流れを汲んで、息の長いトレードを仕掛ける場合、過去にこうした偏った動きがあったということは、大いに参考になりそうです。
まとめ
「ユーロ円の連続する月足陽線と月足陰線の回数・値幅・変動率のまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
筆者は普段のトレードでは、ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析、そして値動き分析などをもとにトレードを仕掛けていますが、今回、ユーロ円の月足の連続陽線と陰線を調べてみて、十分、勝算があるトレードを幾つか組み立てることができるように感じました。
例えば、世界経済が好調に推移するときのユーロ買い円売りや年末のユーロ買い円売りのアノマリーなどは、リスクリターンで見ても狙う価値がありそうです。
読者の方にとっても、今回の分析が少しでもトレードのヒントになれば、幸いです。
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました!