土日以外は休むことなく動いている為替市場において、ユーロドルはまるでシーソーのように上がったり下がったりを日々繰り返していますが、ときとして一時的に、どちらかに大きなトレンドが発生することがあったりします。
そこで、本記事では過去のトレンドの実態を探るべく、「月足」をベースにユーロドルの陽線や陰線がどれだけ連続したことがあるのかということを回数や値動き、変動率でまとめてみました。
月足ベースでトレードの戦略を組み立てているという方などを対象に、トレードのヒントにして頂ければと思います。
では、早速見ていきましょう。
ユーロドルの連続する月足陽線と月足陰線の回数~1997年から2016年~
下記は、1997年から2016年の月足チャートになります。
データ出所/GMOクリック証券
そして、上記のチャートをもとに、単純に陽線あるいは陰線が続いた回数をカウントしたのが、下記の表になります。
連続した数 | 陽線 | 陰線 |
---|---|---|
2ヶ月 | 10回 | 10回 |
3ヶ月 | 8回 | 6回 |
4ヶ月 | 3回 | 4回 |
5ヶ月 | 4回 | 0 |
6ヶ月 | 1回 | 1回 |
7ヶ月 | 0 | 2回 |
8ヶ月 | 0 | 0 |
9ヶ月 | 0 | 1回 |
10ヶ月 | 1回 | 0 |
注目すべき点としては、ユーロドルに関しては、過去20年の間、陽線が3ヶ月~5ヶ月連続して起こる回数が、陰線よりも多いということが挙げられます。(陽線15回に対して、陰線は10回)
どういったことが影響しているのかは分かりませんが、ユーロは一旦買われ出すと、3ヶ月~5ヶ月ほど連続することが多い傾向にあるということは覚えておいて損はなさそうです。
一方で、陰線の特徴としては、6ヶ月~7ヶ月連続で売られたときが3回ほどあり、陽線の1回と比べると回数的にはやや多く、ユーロは稀にダラダラと長い期間に渡って売られ続けることがあるということも見て取れます。
順張りのトレードのスタンスとしては、ユーロ買いを仕掛けるときは手仕舞いは様子を見ながら、ユーロ売りについては、短期で手仕舞うか、あるいは強気で売り続けるといったスタンスが考えられるのではないでしょうか。
逆張りで仕掛ける場合は、買い売りどちらにしても4ヶ月~5ヶ月連続した後から仕掛けるというのが、一つの目安になりそうです。
連続する月足陽線と月足陰線の値幅と変動率~1997年から2016年~
では、続いては、もう少し上記の連続した陽線と陰線の値動きについて詳しく見ていくことにしましょう。
2ヶ月連続で続いた陽線と陰線は回数が多いため省略し、3ヶ月連続で陽線あるいは陰線が続いた期間と、その期間中の値幅と変動率について見ていきたいと思います。
〇連続した月足陽線の値幅と変動率
まず、最初にご覧いただくのはユーロドルの連続した陽線の値幅と変動率になりまして、それを表にまとめたものが、下記になります。
連続した陽線 | 値幅 | 上昇率 |
---|---|---|
1997.8~1997.10(3ヶ月) 始値1.07040⇒終値1.14250 | +0.0721 | +6.7% |
1998.07~1998.10(4ヶ月) 始値1.095000⇒終値1.18820 | +0.0932 | +8.5% |
2001.6~2001.9(4ヶ月) 始値0.84460⇒終値0.91020 | +0.0656 | +7.7% |
2002.2~2002.6(5ヶ月) 始値0.85850⇒終値0.99080 | +0.1323 | +15.4% |
2002.8~2003.5(10ヶ月) 始値0.97700⇒終値1.17810 | +0.2011 | +20.5% |
2004.8~2004.12(5ヶ月) 始値1.20170⇒終値1.35520 | +0.1535 | +12.7% |
2006.3~2006.5(3ヶ月) 始値1.19180⇒終値1.28060 | +0.0888 | +7.4% |
2007.2~2007.4(3ヶ月) 始値1.29980⇒終値1.36470 | +0.0649 | +4.9% |
2007.9~2007.11(3ヶ月) 始値1.36270⇒終値1.46320 | +0.1005 | +7.3% |
2008.1~2008.3(3ヶ月) 始値1.46200⇒終値1.57870 | +0.1167 | +7.9% |
2009.7~2009.11(5ヶ月) 始値1.40310⇒終値1.50040 | +0.0973 | +6.9% |
2010.12~2011.4(5ヶ月) 始値1.29815⇒終値1.48033 | +0.18218 | +14.03% |
2012.1~2012.3(3ヶ月) 始値1.29318⇒終値1.33427 | +0.04109 | +3.1% |
2012.8~2013.1(6ヶ月) 始値1.23032⇒終値1.35763 | +0.12731 | +10.3% |
2013.9~2013.12(4ヶ月) 始値1.32123⇒終値1.37443 | +0.0532 | +4.02% |
2014.2~2014.4(3ヶ月) 始値1.34840⇒終値1.38659 | +0.03819 | +2.8% |
2016.2~2016.4(3ヶ月) 始値1.08302⇒終値1.14517 | +0.06215 | +5.7% |
注目ポイントとしては、通貨ユーロの本格導入後のユーロ高(2002.2~2002.6)、低調なアメリカ経済を起因とするドル安(2002.8~2003.5)、ユーロ圏の財政危機からの反騰相場(2010.12~2011.4)などが挙げられ、いずれも陽線が連続した期間や値幅、上昇率など目を見張る大相場になっています。
ただ、10ヶ月続いた2002.8~2003.5のユーロ高相場を除けば、過去約20年間で、陽線が連続した期間のほとんどは長くても6ヶ月、変動率で+15%程度が、ほぼ上限となっていることから、トレンド相場終焉の節目については、それらの数値を意識しておけば良さそうです。
では、続いては陰線の方も見てみましょう。
〇連続した月足陰線の値幅と変動率
連続した陰線 | 値幅 | 下落率 |
---|---|---|
1997.11~1998.1(3ヶ月) 始値1.14000⇒終値1.07750 | -0.0625 | -5.5% |
1999.1~1999.61(6ヶ月) 始値1.17400⇒終値1.04200 | -0.132 | -11.3% |
1999.10~2000.4(7ヶ月) 始値1.06760⇒終値0.91200 | -0.1556 | -14.6% |
2000.7~2007.10(4ヶ月) 始値0.95220⇒終値0.92590 | -0.0263 | -2.8% |
2001.1~2001.3(3ヶ月) 始値0.94230⇒終値0.87740 | -0.0649 | -6.9% |
2001.10~2002.1(4ヶ月) 始値0.91060⇒終値0.85840 | -0.0522 | -5.8% |
2003.6~2003.8(3ヶ月) 始値1.17130⇒終値1.09830 | -0.073 | -6.3% |
2005.3~2005.6(4ヶ月) 始値1.32250⇒終値1.21030 | -0.1122 | -8.5% |
2005.9~2005.11(3ヶ月) 始値1.23420⇒終値1.17860 | -0.0556 | -4.6% |
2008.7~2008.10(4ヶ月) 始値1.57530⇒終値1.27290 | -0.3024 | -19.2% |
2009.12~2010.6(7ヶ月) 始値1.50040⇒終値1.22364 | -0.27676 | -18.5% |
2014.7~2015.3(9ヶ月) 始値1.36916⇒終値1.07299 | -0.29617 | -21.7% |
2015.9~2015.11(3ヶ月) 始値1.12086⇒終値1.05631 | -0.06455 | -5.8% |
2016.10~2016.12(3ヶ月) 始値1.12386⇒終値1.05171 | -0.07215 | -6.5% |
陰線の注目ポイントとしては、2008.7~2008.10や2009.12~2010.6のようにリーマンショックやPIGSに代表されるユーロの財政危機といったリスク回避の局面では、4~7ヶ月に渡って約20%近くユーロが売られたりすることがあるという点です。
ユーロ安ドル高相場の中でも、リスク回避でユーロ安が進む相場では、短期間で強烈なユーロ売りになったり、ダラダラとユーロ安が続くことが少なくありませんので、為替相場に長く対峙している方であれば、実感として経験されている方もいるのではないでしょうか。
上記の表は、それを数値として裏付けるような値動きになっています。
ユーロドルの連続する月足陽線と月足陰線の出現頻度について~1997年から2016年~
では、ここからは、連続する月足陽線と月足陰線を一つの”かたまり”としてみて、どんなときに月足陽線や月足陰線が続きやすいのかということを見ていきたいと思います。
それを確かめるために、上記でまとめた表を時系列で並べたものが下記になります。
赤色がユーロ高ドル安、青色がユーロ安ドル高を表しています。
こうして時系列で並べてみますと、幾つか興味深いことがありまして、例えば、1997年以降のドル高ユーロ安局面では、青色が6回中5回出ていまして、これは、月足で3ヶ月以上の連続陰線が約3年半の間に、5回も出現するほどユーロが一方的に売られたことを意味しています。(1997.11~2001.03)
また、リーマンショック以降の株高局面では、ユーロの財政危機があったにも関わらず、2009年から2014年にかけて、3ヶ月以上の月足陽線がかなりの高い確率(7回中6回)で出現するほどユーロ高が続いたことが分かります。
まとめ
「ユーロドルの連続する月足陽線と月足陰線の回数・値幅・変動率のまとめ」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
筆者は普段のトレードでは、ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析、そしてアノマリーに近い値動き分析などをもとにトレードを仕掛けていますが、今回ユーロドルの月足の連続陽線と陰線を調べてみて、十分、勝算があるトレードを幾つか組み立てることができるように感じました。
特に5ヶ月以上陽線が連続した月足の後のユーロ売りや、株高局面でのユーロ買いドル売りの順張り狙いなどは、リスク・リターンで考えても妙味がありそうです。
読者の方にとっても、今回の分析が少しでもトレードのヒントになれば、幸いです。
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました!