為替相場では、ときとして意外な時間に、大きな値動きが起こり、そして、それが後で振り返ったときに、その日の相場の値動きを示唆するものだったというケースが少なくありません。
そこで、今回はそんなケースの代表的なパターンの一つである東京時間の早朝の大きな値動きがあったときについて説明していきたいと思います。
早速見ていきましょう。
東京時間の早朝に大きな値動きが起こる”事情”
東京時間の早朝は、同じアジア・オセアニアにあるニュージーランドのウェリントン市場と時間が重なっている時間のことを指しておりまして、時間帯で言えば、日本時間の早朝6:00~8:00あたりの時間帯のことを指しています。
その時間帯は、NY市場がクローズしていること、取引量の多い東京勢がまだ参加前ということもあり、マーケットは流動性が低くなる時間帯と言われておりまして、外部環境としては、もともと、値が”飛びやすい”という特徴を備えています。
そんな流動性の低い東京時間の早朝ですが、少し見方を変えてみますと、大口のプレイヤーにとっては、流動性が低いということは、大きなポジションを取ったり、決済するのには不向きな時間帯であるということが言えるかと思います。
そして、そんな大口プレイヤーにとって不利な東京時間の早朝に、わざわざ大口プレイヤーが値を飛ばしてまで、取引をしなくてはいけないとすると、何かよほどの事情があるということにはならないでしょうか。
「でも、誤発注という可能性は?」
確かに、誤発注という可能性もあるかもしれません。
ただ、わざわざ東京時間の早朝の時間帯で大きなポジションを作ることができる力のある人間、あるいはプログラムで制御されたアルゴリズムがそこに存在したのは事実になるかと思います。
そして、仮に、東京早朝の大きな値動きに何かよほどの事情があったとしますと、そこから、さらに想像力を働かせてみますと、その大口のプレイヤーは、もしかして、その日も含めて、段階的に新規のポジション作成や決済を計画しているのでは?という見方もできることから、東京時間の早朝の大きな値動きは、その日の値動きの”序章”ということも十分有り得るということになります。
では、実際のケースで見ていきたいと思います。
東京時間早朝に突然現れた大口のドル売り円買い
まず、最初にご覧いただくのは、2016年7月29日(金)の東京時間の早朝に突如、大口のドル売り円買いが持ち込まれたケースになります。
下記は、2016年7月29日(金)の5分足チャートです。
チャート出所/DMM FX
この日は、月末の最終営業日、さらに、日銀の金融政策決定会合の日ということもあり、朝から、相場には緊張感が漂っていましたが、時間帯はまだ東京時間の早朝。
大きな変動があることが予想される日とは言え、さすがに、この時間帯からは動かないだろう・・・というムードの中、突然持ち込まれた大口のドル売り円買いは、わずか1分間ほどの間にドル円を104.65円から103.398円まで下押しします。
筆者もリアルタイムでその値動きを見ていましたが、まさに電光石火の値動きとも言うべき早さで、取引が薄い中をストーンッと下げていき、今日の相場が”只事では済まない”ということを予感させるのに、十分な値動きでした。
と同時に、筆者は、こんな時間帯に、これほどのドル売り円買いを持ち込むのは、よほどの事情があると見て、そこから、ドル円については、売り目線で臨むことに。
チャート出所/DMM FX
すると、東京時間がはじまると、ドル円相場は、ズルズルと円高が進み、そして、断続的に大口のドル売り円買いが投げ込まれ、頭の重い展開が続きます。
そして、いよいよこの日の最重要テーマである金融政策発表を迎えることになります。
チャート出所/DMM FX
結果は、ご存知の通り、早朝の大口のドル売り円買いが示唆していたかのように、金融政策発表後、ドル円は104.5円から102.8円まで急落。
その後、ロンドンタイムでリバウンドをするものの、NYタイムに入ってからは、その日発表されたアメリカの経済指標が弱かったこともあり、安値引けという形でその日を終えています。
終わってみれば、東京時間早朝のドル円の大口売りが、まるで、その日のドル円の値動きを示唆するかのように終始ドル売りが進んだ形となりまして、度重なる、断続的な大口の売りや安値引けなどは、その陰に大量のドルを売る必要があった大口の誰かが存在していたことを窺わせるのに十分な内容でした。
では、今度は逆のパターンも見ていきましょう。
東京時間早朝・・窓開けからの大口のドル買い円売り
下記は2016年7月18日(月)の約一日分の10分足チャートになります。
この日は、前営業日にあたる7月16日(金)のNY時間の終わりにかけて、トルコでクーデターが発生し、それを受けて、ドル円はNYの引けにかけて急落。
しかし、土日の間に、トルコ政府がクーデターを阻止したことから、一転、ドル円は窓を開けて大幅なドル買い円売りでマーケットが始まります。
チャート出所/DMM FX
悲観から楽観にマーケットが変わるときは、ドル円は特に大きくドル買い円売りが出やすいという特徴がありますが、東京時間の早朝朝7時から、105.25円から106円近くまで買い上げるというのは、かなりの買い圧力です。
そして、この日もご覧いただきました通り、早朝のドル買い圧力が示唆する通り、終始、下げると断続的にドル買い円売りが入り、最終的には早朝高値も超える水準でマーケットが引ける形になっています。
チャート出所/DMM FX
東京時間早朝の大きな値動きがあったときのトレード戦略
では、ここまで東京時間の早朝に大きな値動きがあったときの、相場のパターンをご説明してきましたが、ここからは、それをもとにしたトレード戦略についても触れておきたいと思います。
と言いましても、東京時間早朝に大きな値動きがあったときのトレード戦略は非常にシンプルで、大きな値動きがあった方に「順張り」するだけです。
大きな円高が起こったときは、戻りでドルを売っていく、大きな円安が起こったときは、下げたところでドルを買っていくという流れになります。
東京時間早朝の大きな値動きがあったときのトレードの注意点とまとめ
では、続いてトレードの注意点についても見ておきたいと思います。
ここまでは、東京時間の早朝に大きな値動きがあったときは、終始、順張りな動きが出やすいということを説明しましたが、しかし、相場に絶対は有りません。
つまり、早朝の大きな値動きとは逆の動きをすることも十分考えられます。
実際に、そうした動きが起こったときにも対応できるように、損切りラインの設定だけは忘れずにしておきましょう。
また、ボラティリティが大きい日は、相場の乱高下に巻き込まれてしまう可能性もありますので、ポジションサイズには細心の注意を払っておきたいところです。
本記事が、FXでトレードをしている人、あるいは、これからトレードをしようと考えている人のお役に立てれば幸いです。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました!